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2018年7月号トピックス5人材

博士課程の「収益率」が急回復

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2018.7.1

プラチナ社会センター佐野 紳也

人材

POINT

  • 博士課程進学者の減少で、日本の国際競争力後退が懸念される。
  • 敬遠ムードの背景には「ポスドク問題」を受けた費用対効果への疑念がある。
  • 実際には就職率が上昇を続け、厚遇もされるようになってきた。
イノベーション創出を続けるには、高度な専門知識をもつ人材が不可欠である。しかし、2017年度の博士課程入学者は1万4,766人と、ピーク時の2003年度から19%も減った。この結果、人口に対する博士号取得者の数も、欧米や韓国とは逆に、減少傾向にある。日本の国際競争力がさらに後退するのではないかと懸念される。

博士課程敬遠ムードの背景には、数年前に話題となった「ポスドク問題」があるようだ。ポスドクとは期間限定で研究に携わる「博士研究員(Postdoctoral Fellow)」のこと。正規雇用ではなく、無給で研究を続けている人も存在する。高い学費を払って博士号を取ったとしても、少子高齢化で席がなかなか空かない大学の教員にはなれず、企業への就職もできないまま、ポスドクであり続けなければならないようでは、費用対効果が疑わしいとの意識※1も根強い。

だが、状況は変わっている。当社の「生活者市場予測システム (mif) 」が毎年アンケート対象としている20~69歳の男女3万人には、約200人の博士課程修了者が含まれる。このうち、一般企業に就職した博士課程(医療・福祉、教育を除く)修了者について、払った学費が就職後の賃金上乗せにどの程度寄与したか示す「内部収益率」を計算してみた。2015、2016年度は、博士課程まで進むよりも、修士課程を終えて就職した方が、内部収益率は高かった。しかし、2017年度になると状況は逆転、博士課程を修了した人の収益率が、修士課程修了後に就職した人を超えた(図)。

この内部収益率はあくまで、企業に就職できた人を対象としている。ただし、文部科学省の「学校基本調査」によると、博士課程修了者に占める就職者(正規の教員や有給のポスドクになった人も含む)の比率は4年連続で上昇した。博士課程の「コストパフォーマンス」は、着実に改善しているのだ。

数年前のポスドク問題のイメージにとらわれ、博士課程に進学するかどうか悩んでいる学生は多いかもしれない。しかし、こうした人々が実態に勇気付けられて博士課程に進み、企業で本領を発揮すれば、日本経済へのプラス効果拡大も期待できるだろう。

※1:文部科学省 科学技術政策研究所「日本の理工系修士学生の進路決定に関する意識調査」(2009年3月)。

[図]大学院進学者の「内部収益率」