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2018年7月号トピックス1環境・エネルギー

再エネ時代のデマンドレスポンスを考える

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2018.7.1

環境・エネルギー事業本部入江 寛

環境・エネルギー

POINT

  • デマンドレスポンス(DR)は電力供給安定化への貢献が期待される。
  • 再エネ時代のDRは「需要シフト型」と「地産地消型」に進化。
  • 米国の事例も参考に、具体的な制度設計や実運用に向けた取り組みが必要。
2018年1月22日に関東地方を襲った大雪により、電力需要が一時的に急増し、東京電力パワーグリッドのサービスエリアは厳しい需給状況下に置かれた。この事態を救った調整力として注目を集めたのが、「デマンドレスポンス(DR)」だ。DRとは電力需給がひっ迫した時間帯、あるいは逆に余剰電力が発生した時間帯にビルや工場、家庭の利用者が電力会社からの要請に基づいて利用を一時的に調整し、その対価として報酬を得る仕組みである(図)。同エリアで初めてDRが発動され、需要量の調整に基づき需給ひっ迫状態を回避することができた。

現在のDRは主に需給ひっ迫時の電力抑制を目的としている。今後は再生可能エネルギーが主力電源となる時代に向けて、DRが担う役割を拡大させる必要がある。

方法には主に2通りある。一つは、需要をシフトさせる方法である※1。日本では、太陽光発電の増加が昼間の時間帯に電力の余剰をもたらすことが懸念されている。電力利用者が昼間に消費を増やしてくれれば余剰を低減することが可能となる。DRで先行する米国でも、需要をシフトさせるDRに関して、カリフォルニア州当局がシフト自体の価値およびこれを市場で扱うための検討を進めている※2

もう一つは、「地産地消型」で送電する電力量を抑制する方法である。太陽光発電の集中的な導入地域では、計画されていた送電電力に太陽光からの電力が上乗せされ、送配電線の送電限界を超えかねない。オーバーフローを回避するためには、電力の地産地消を促進し送配電ネットワークへの負担軽減を図る必要がある。ニューヨークでは送電制約が生じている地域の利用者を対象とした実運用がすでに開始されている※3

このような再エネの課題に対応するDRの技術的検討・実証は日本でも一部開始されており、電力利用者のエネルギーマネジメントシステム※4や蓄電池を活用した、電力消費量の見える化や、空調や照明、家電の制御などが検討されている。米国では技術的検討・実証に加えて、DRの電力市場での取り扱い方や評価方法を含む制度設計や実運用に向けたより深い検討がなされている。日本でも同様に具体的な取り組みを加速させていく必要がある。

※1:省エネルギーの観点からは、ほかの時間帯に使うはずだった家電・オフィス機器などを、望ましい時間帯に使用してもらうよう促すような取り組みとすべきである。このように電力利用の時間帯を変更することを、ここでは「需要のシフト」と呼んでいる。

※2:カリフォルニア州公益事業委員会は、需要をシフトするDRの制度設計を行っていくために Load Shift Working Group を立ち上げ、議論を進めている。

※3:ニューヨークの電気事業者である Consolidated Edison の Brooklyn Queens Demand Management (BQDM) という取り組み。

※4:HEMS (Home Energy Management System) / BEMS (Building Energy Management System) などのシステムで、家庭やビル、工場などのエネルギー利用を統合的に制御する。

[図]デマンドレスポンスの概要

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