医療機器産業の市場規模は世界全体で約37兆円※1に及び、事業参入を目指す企業が国内外で増えつつある。グローバルレベルで競争が激化する中、自社開発だけで生き残ることは難しい。各社は大学などの研究機関との連携(いわゆる産学連携)やベンチャー企業のM&Aなど、外部から技術を取り込んで事業の拡大を図っている。大塚製薬のグループ企業がステント※2の開発を行うベンチャー企業を買収したように、国内事例も現れている。だが海外勢に比べると、まだこれからという状況にとどまっている。
日本企業の巻き返しのためには、何よりも顧客(ユーザー)の潜在的ニーズを満たす「価値」の提供に知恵を絞るべきだろう。産学連携やM&Aはあくまでも事業参入に必要な資源(技術、ノウハウなど)を獲得する手段である。しかし現実には、技術の独自性や新規性に目が向く傾向が強く、ユーザーへの価値提供を軽視するケースも散見される。理由の一つはユーザーである医療機関のニーズが見えにくい点にある。病院の手術室や診察室に「部外者」は簡単に立ち入れない。もう一つ、どの分野においても言えることだが、従来の価値観を排除して自由に発想することは意外に難しい。
海外ではこうした問題に2000年代初頭から取り組んでいる。例えばスタンフォード大学の「バイオデザイン・プログラム」がある。同プログラムは17年間で47社が起業する成果を挙げている。通常は立ち入れない医療現場でユーザーの潜在的ニーズを掘り起こすなど、医学部と連携して試作と検証を行うプログラムを提供している。発掘したニーズを起点に、「コンセプト創造」から「コンセプト選択」に至るサイクルを回してイノベーションを実現する(図)。コンセプトの選択に当たっては、簡単かつ安価に入手できる材料や身近な品物を使ってプロトタイプを製作し、素早く形にする。
同様の取り組みは英国やインド、シンガポールなど各国に広がっている。日本においても2015年に「ジャパン・バイオデザイン」が開設された。デザイン思考を身に付け、新規事業をけん引できる人材を育成・確保するために、こうしたプログラムを活用してみてはどうだろうか。
日本企業の巻き返しのためには、何よりも顧客(ユーザー)の潜在的ニーズを満たす「価値」の提供に知恵を絞るべきだろう。産学連携やM&Aはあくまでも事業参入に必要な資源(技術、ノウハウなど)を獲得する手段である。しかし現実には、技術の独自性や新規性に目が向く傾向が強く、ユーザーへの価値提供を軽視するケースも散見される。理由の一つはユーザーである医療機関のニーズが見えにくい点にある。病院の手術室や診察室に「部外者」は簡単に立ち入れない。もう一つ、どの分野においても言えることだが、従来の価値観を排除して自由に発想することは意外に難しい。
海外ではこうした問題に2000年代初頭から取り組んでいる。例えばスタンフォード大学の「バイオデザイン・プログラム」がある。同プログラムは17年間で47社が起業する成果を挙げている。通常は立ち入れない医療現場でユーザーの潜在的ニーズを掘り起こすなど、医学部と連携して試作と検証を行うプログラムを提供している。発掘したニーズを起点に、「コンセプト創造」から「コンセプト選択」に至るサイクルを回してイノベーションを実現する(図)。コンセプトの選択に当たっては、簡単かつ安価に入手できる材料や身近な品物を使ってプロトタイプを製作し、素早く形にする。
同様の取り組みは英国やインド、シンガポールなど各国に広がっている。日本においても2015年に「ジャパン・バイオデザイン」が開設された。デザイン思考を身に付け、新規事業をけん引できる人材を育成・確保するために、こうしたプログラムを活用してみてはどうだろうか。
※1:経済産業省「我が国医療機器産業について」(2018年2月)を基に1ドル=110円として換算。
※2:血管、気管、食道などの管状の臓器を内部から広げる医療部品。例えば、脳血管の拡張により血栓を除去することができる。