マンスリーレビュー

2019年8月号 経済・社会・研究開発

地方都市の人口と活力を保つヒント

同じ月のマンスリーレビュー

タグから探す

2019.8.1

未来構想センター佐野 紳也

経済・社会・研究開発

POINT

  • 子育て世代にとって短い通勤時間は重要な要件。
  • これは福岡市の人口が一貫して増え続けている背景でもある。
  • 大都市の活力を保つ鍵は表面からは見えにくい。
日本は2011年に人口減少社会に突入したが、東京圏への一極集中は加速している。こうした中で地方都市が人口を保つには、子育て世代を呼び込む方策が必要である。

当社の 生活者市場予測システム (mif)*1で全国の30代就業者に、何に生きがいを感じるか聞いた(複数回答)ところ、子供の有無で結果が逆転した。子供がいない場合は「余暇・趣味」「仕事」「家庭」の順だが、いる場合は「家庭」「余暇・趣味」「仕事」の順となる(図)。この傾向は20代の就業者でも同じだった。

家庭生活の充実度合いは、通勤時間にも左右される。その条件を満たしている大都市の典型が福岡市だ。前述のmif調査で、子供のいる30代就業者の往復通勤時間(1日平均)をみると、福岡市内で勤務している場合は0.8時間である。東京23区の1.4時間、大阪市の1.3時間、名古屋市の1.0時間に比べ、かなり短い。子育てに必要な広さをもつ住宅を、職場から遠くない地域で確保しやすいと推測できる。

福岡市の人口は1970年代から一貫して増加し、2013年に150万人を突破した後も増え続けている*2。市当局はサービス業を中心とする企業誘致に努めるとともに起業支援に積極的*3で開業率も高い。雇用確保に加えて、通勤時間の短さが示すように職住接近につながるコンパクトな都市づくりが進んできた。

医療や学費の面でも、子育て世代にとっての恩恵が大きい。病気になった子供の保育を代行する「病児・病後児保育事業」の施設数が多く、事業の延べ利用件数は2017年度に政令指定都市でトップとなった*4。私立の中学・高校の年間授業料が、人口100万人超の都市にしては割安との統計もある。

天神や中洲といった魅力的な繁華街、とんこつラーメンやもつ鍋に代表される博多料理、都市部の近郊に広がる豊かな自然など、転勤族や若者に人気の要素だけが、福岡市が長期にわたって人口増加を続けてきた要因ではないだろう。こうした表面的なイメージからは見えにくい子育てのしやすさは、地方都市が活力を保ち続ける上で、十分なヒントになりえる。
[図] 30代就業者の「生きがい」(全国調査)

*1:三菱総合研究所が生活者を対象に価値観、生活者意識・行動など約2000問を毎年調査している生活者データベース。

*2:福岡市の人口推計より。1972年から2018年まで毎年10月1日現在の人口が増加を続けている。

*3:MRIマンスリーレビュー2017年11月号「都市でイノベーションを加速させるには

*4:「福岡市こども未来局」の作成資料より。

バックナンバー

関連するナレッジ・コラム

もっと見る
閉じる

関連するセミナー

  • 2019.12.18[水] 開催セミナー 住友不動産六本木グランドタワー36F ウイングアーク1st株式会社