マンスリーレビュー

2019年8月号トピックス2デジタル・イノベーション

「減価するデジタルマネー」の経済効果

同じ月のマンスリーレビュー

タグから探す

2019.8.1

コンサルティング部門 イノベーション・サービス開発本部奥村 拓史

デジタル・イノベーション

POINT

  • キャッシュレス決済による生産性向上と消費促進に期待が高まる。
  • 時間とともに価値が減少(減価)するデジタルマネーの社会実験を実施。
  • 導入効果として30%程度の消費拡大が見込まれている。
LINE PayやPayPayなどキャッシュレス決済が花盛りである。主役は「モバイルペイメント」と呼ばれる、スマートフォンとQRコードを使った新しい決済手段だ。政府の後押しも強力な追い風となっている※1

キャッシュレス決済は社会にどのようなメリットをもたらすのか。当社では、①現金取り扱いコストの削減や無人化・省力化による生産性の向上、②消費促進による経済活性化の二つの経済効果に着目した。いずれも効果は大きそうだが、実際のところ、効果は判然としていない。

そこで当社は2019年2月、キャッシュレス決済に関わる社会実験を3地域同時に実施※2。時間とともに価値が減少するデジタルマネー※3(以下、「減価するマネー」)を用いて、特に②に関する経済効果についての検証を行った※4。比較するのは顧客あたりの利用額だ。その結果、減価するマネーは消費を促進し経済を活性化することが明らかになった。当社では、これらの効果を総合した場合に、30%程度の消費拡大効果が見込まれると試算した。同時にいくつかの興味深い特徴があることもわかった(図)。

1点目は、消費促進は減価率の大きさではなく、減価「する」「しない」で決まる。2点目は、減価に対する男女の行動特性の違いだ。女性は顕著な回避性向が認められ、対象者のほぼ全員が減価前に来店した。一方、男性は減価に無頓着な傾向があるが、来店した場合の利用額が大きい。最後は、年代によって回避時の消費性向に差があることだ。30代と60代は消費を大きく増やす傾向が認められた。

本結果は、利用者から加盟店へ一方向しか使えないマネー※5による減価効果にすぎない。経済の大きさは、お金の所有者が変わる頻度(どれだけ流通するか)によって決まる。法制度などの環境が整い、個人間送金※6によって減価するマネーが現金のように転々流通すれば、減価効果と相まってより大きな経済効果が期待できる。

支払いの電子化だけでは経済は大きくならない。今後、転々流通が可能になれば「消費主導型社会」の実現が大きく近づく。

※1:未来投資戦略2017では2027年キャッシュレス決済比率40%というKPIを掲げ、キャッシュレス推進事業を推進。2019年10月より「キャッシュレス・消費者還元事業」が実施される。

※2:総務省からの請負事業の一環として大阪市上本町、浜松市、福山市で行った。

※3:利用がないとある時点で一定率のコインが消滅する機能をもつマネー。頻度は月1回。対象者には減価する日の数日前に通知(アナウンス)する。

※4:実験参加者は3地域で約581名。効果を比較するために、各地域で減価「する」「しない」のグループを設けた。

※5:電子マネーと同義。

※6:個人間でデジタルマネーのやり取りができる機能。モバイルペイメントがもつ新しい機能の一つ。

[図] 実証実験から得られた減価するデジタルマネーに関する気づき

バックナンバー

関連するナレッジ・コラム

もっと見る
閉じる

関連するセミナー