マンスリーレビュー

2020年2月号トピックス2ヘルスケア・ウェルネス

「医療機器×AI」の加速化に向けて

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2020.2.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部藤井 倫雅

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 世界規模で医療分野へのAI活用が加速しているが承認件数は米国が先行。
  • 日本の競争力向上にはデータ整備、開発ガイドライン、人材流動化が必要。
  • ベンチャー主体のニッチ分野でもあり、日本勢が活躍できる余地は十分。
医療の世界でもAI活用が本格化している。2019年9月末までの1年間で医療AI分野のスタートアップ企業が世界全体で調達した資金は計4000億円※1に達した。ただ、AIを用いた医療機器プログラムが米国では2017年以降で約30件承認されているのに対し、日本では2019年9月にようやく2件目が承認されたばかりである。

日本での開発加速には三つの要素が不可欠であろう。まずはAIによる学習の材料となるデータの整備である。「5歳の男子の胸部レントゲン写真にこうした影が出れば、こうした病気が疑われる」というように、画像をもとにして考えられる疾患を割り出すには、大量の症例データを分類・共有しておく必要がある。AI技術者や経営人材が相対的に不足している事情はあるにせよ、この膨大な作業を、個人情報の問題をクリアしつつ迅速に進められるかが鍵となる。

第二に、開発ガイドラインの策定である。医療AI分野は開発の前例が少ないため、厳しい法規制をクリアして製品を市場に投入するには、どのような実験をすべきなのかを研究者が把握する必要がある。越えるべき山の高さだけではなく、越え方に関するヒントも欠かせない。医療AIプログラムは、開発から規制対応までを全て、ベンチャー企業がリスクを負って担うケースが多い※2。経営資源の限られたベンチャー企業にとって、こうしたガイドラインの存在が重要といえる※3

第三に、専門人材の流動化である。医療機器の開発には、臨床医学、薬事戦略(法規制対応)、保険戦略(製品の保険適用)など、それぞれの専門領域に知見をもつ人材が求められる。日本では大企業からベンチャー企業への人材流動はまだ少ないため、こういった専門人材とのマッチングの仕組みを整備することが重要である。

医療機器はニッチ市場の集合体で、大企業だけでなくベンチャー企業も活躍する場は十分にある。AI先進国の米国といえども、承認されているのは画像診断などにとどまり、発作や容体急変前の「予兆」検知や手術ロボット自動化などは開発途上である(図)。こうした分野で日本勢に活躍の余地があろう。

※1:米CBインサイツ調べ。

※2:米国で承認された製品の7割程度は、ベンチャー企業が申請者だと考えられる。

※3:画像診断支援システムについては2019年12月に開発ガイドラインが公開されている。

[図]米国でのAIを用いた医療機器プログラムの承認状況

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