マンスリーレビュー

2020年2月号トピックス6経済・社会・研究開発

50周年記念研究 第2回:ウェルビーイング志向の革新技術活用が新たな価値創造を生む

同じ月のマンスリーレビュー

タグから探す

2020.2.1

未来構想センター白戸 智

POINT

  • 急速な革新技術の普及は未来への期待とともに不安も招く。
  • 今後社会が目指すべきは、将来世代にわたるウェルビーイングの実現。
  • ウェルビーイング志向の革新技術活用で新たな社会の価値創造を。
AI、ロボット、IoTなどの革新技術による、いわゆる第4次産業革命が進行しているが、急激な社会変化や、自動化・無人化による労働代替進展など、未来に対する不安も多い。世界で「ウェルビーイング」への注目が集まっているのも不思議ではない。

ウェルビーイングはもともと世界保健機関(WHO)憲章の中で、人が身体的だけでなく、精神的にも、社会的にも良好な状態であるという広義の健康概念として使われた用語である。これが近年、より幅広い人類の幸福・QOLを示す概念として拡張利用されている※1。人類のありたい未来を描く50周年記念研究では、未来社会が満たすべきウェルビーイングの構成要素を、①健康、②つながり、③新たな価値創出と自己実現、④安全・安心、⑤これらの将来世代にわたる実現、と定義した(図)。

革新的な医療技術や身体機能を拡張する「人間拡張技術」は高い健康・QOLを実現し、遠隔地で疑似的に存在できる「アバター技術」は新たなつながりの創出に活用できる。革新技術による単純・単調労働からの解放や、AIの支援を受けた研究開発など新たな価値創造も期待される。革新技術によるウェルビーイング向上の共通課題として、技術倫理や生命倫理、社会分断などの不安が取り除かれること、これらを将来世代にも平等に実現することも、ありたい未来実現の必須条件である。その際には、革新技術が社会から受容され、しっかりとマネジメントされていることが重要となる。

オーストリアの第3の都市リンツでは、「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」というイベントが毎年開催される。2019年は、「既成概念からの脱出(Out of the Box)」をテーマに、人とAIの協働による新たな音楽・映像表現や、SNSの「全体像の可視化」など、アートを介して人と技術をつなぐ多数の試みが展開された。そこで示されていたのは、“人”の専門家であるアーティストと“技術”の専門家である技術者の協業によりウェルビーイングが実現される、新たな未来の姿である。本研究では、社会の多様な主体が参加・協業し、多様な視点を踏まえて革新技術を人類のウェルビーイング向上に向けて活用する未来社会の実現方法を提案・実現していきたい。

※1:OECDからは生活満足度など11分野を含むウェルビーイング指標のガイドラインも公表されている。

[図]本研究における未来社会で目指すウェルビーイングの考え方

バックナンバー

関連するナレッジ・コラム