マンスリーレビュー

2020年2月号トピックス3地域創生経済・社会・研究開発

「カーサ・ヴェルディ」に学ぶ生涯活躍できる場所

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2020.2.1

プラチナ社会センター松田 智生

地方創生

POINT

  • ミラノに「音楽家のための憩いの家」という高齢者住宅がある。
  • 入居条件は音楽関係者で年金の8割を払えば誰でも住むことができる。
  • 音楽という共通の価値観を活用した自立的な経営モデルは日本の参考になる。
世界第一位の超高齢社会先進国、日本。しかし、高齢者が元気なうちに住み替えたくなるような「ついのすみか」を探すとなると、その選択肢は限られてくる。

今の日本が「手本」にすべき高齢者住宅がイタリア・ミラノにある。その名は「カーサ・ヴェルディ」。『椿姫』(つばきひめ)や『アイーダ』などのオペラ作品で知られる作曲家のヴェルディが、「音楽家のための憩いの家」として建築を進め、彼の死後の1902年に開業した(写真)。敷地にはヴェルディの使ったピアノや洋服などゆかりの品も展示され、妻のジュゼッピーナと共に眠る墓にも訪問客が絶えない。

カーサ・ヴェルディの特徴は、その入居条件にある。それは、「音楽に関わりのある人」であること。一部富裕層向けの施設ではなく、年金の8割を払えば貧富に関係なく居住が可能だ。著名な音楽家でも、生涯を通して裕福な人はまれであり、音楽家にも老後の安心は必要という理念のもとに造られた。晩年のヴェルディは、「あなたの作品の最高傑作は?」と問われた際に、名だたるオペラ作品でなく「このカーサ・ヴェルディだ」と答えたという。

2019年9月時点における入居者は70人。そのうち要介護者は25人で、介護が必要になっても退去して他の施設へ移る必要はない。さらに興味深いのは、16人の音大生も一緒に住んでいることだ。彼らは高齢者から音楽のアドバイスを受けたり、ホールで一緒に演奏したりする。作曲家を目指す学生は、「音楽だけでなく人生のアドバイザーたちに囲まれている」と語ってくれた。

カーサ・ヴェルディの主な収入源は、居住者からの家賃に加えて、初期はヴェルディ作品の著作権料、現在はこの施設の理念に賛同する音楽家たち※1からの多額の寄付である。日本でも、シニアのための「生涯活躍のまち※2」を実現するには、芸術や文化、スポーツなど共通の価値観によるコミュニティー形成が重要だ。それらを求心力に多世代の人々や資金を集めるビジネスモデルの好事例として、カーサ・ヴェルディから学べる点は多いはずである。

※1:イタリアのオペラ歌手ルチアーノ・パヴァロッティなど。

※2:当社が提唱する「日本版CCRC」。CCRCとは、米国における健康時から介護時まで継続的ケアを提供するコミュニティー。
MRIマンスリーレビュー「民主導のCCRC2.0へ」(2018年12月号)

[写真]ヴェルディの銅像と「カーサ・ヴェルディ」の外観(左)、中庭(右)

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