ドローンは、空に産業革命をもたらすと期待され、2020年代半ばには全世界の市場規模が4兆円を超えるといわれている。物流・医療・農業・防衛・警備などさまざまな分野で技術・サービスの開発が進められている。海外の先行事例として、米国でAmazonやUPSがドローン物流のための飛行許可を連邦航空局に申請しているほか、スイスでは米Matternetが商用ベースで家屋上空を飛行する医薬品輸送を実用化している。
日本でも、産官学の多くの機関がドローンの技術開発に取り組んでいるが、現状で活用が実現している領域は「散布」「空撮」「測量」である。今後は「点検」「輸送」におけるサービス実現が期待されており、商用展開に向けて積極的に技術開発が進められている。これらの領域では、既存のサービスをドローンに置き換えるだけでなく、これまでにはなかった新たな付加価値を提供することが注目される。以下に紹介する二つの代表的な事例は、すでに実証実験の段階に入っている。
日本でも、産官学の多くの機関がドローンの技術開発に取り組んでいるが、現状で活用が実現している領域は「散布」「空撮」「測量」である。今後は「点検」「輸送」におけるサービス実現が期待されており、商用展開に向けて積極的に技術開発が進められている。これらの領域では、既存のサービスをドローンに置き換えるだけでなく、これまでにはなかった新たな付加価値を提供することが注目される。以下に紹介する二つの代表的な事例は、すでに実証実験の段階に入っている。
【事例1】物流:中山間地域の宅配サービス
長野県伊那市では中山間地域における買い物弱者を支援するためにドローンが配送を行う官民協働の物流プロジェクトが開始されている。ゼンリン・KDDIが参画し、河川上空を幹線航路とする新たな空中物流システム構築とサプライチェーン形成の実現を図るプロジェクトである。地域課題解決のリファレンスモデルの構築を目指している。
【事例2】点検:インフラ点検に関する実証実験
国土交通省は、公共工事において民間で開発された新技術を積極的に活用する狙いで、新技術情報提供システム(NETIS)のテーマ設定型技術公募を実施している。道路・橋梁など必要不可欠なインフラの維持・点検にドローン技術を活用するテーマが多く応募され、研究が始められている。これまで、人間の目に依存する近接目視点検を写真撮影・画像診断で代替する技術は多く研究されてきたが、手と耳を使う打音点検※1を代替する技術開発も進められている。人の手が届きにくい場所における点検作業への活用を目指し、現場の作業負荷の軽減を図ると同時に、将来見込まれる技術者不足に向けてAI技術などとの併用も検討されている。
このように、ドローンを活用した物流・インフラ点検サービスの本格導入に向けて各方面で実証実験が進められているが、その結果、実用化に向けてクリアしなければならない技術・制度両面の課題が明らかになってきた(表)。
技術面の課題として、インフラ点検などに活用していくために位置精度を高める必要がある。橋梁やトンネル点検では、GPS(衛星利用測位システム)電波が受信できない場所でインフラに衝突せずに飛行することが求められる。そのためにはカメラ・LIDAR※2(光波によるセンサー)などのセンサーを搭載した上で自己位置を推定するSLAM※3(同時に地図作製を行う)などの高度技術の活用が必要になる。
物流用に向けては、ドローンは飛行可能距離や搭載可能重量が不足している。現在主流となっている電動マルチローター機では、例えば10kgの荷物を積んだ状態で20km飛び続けられる機体は少ない。機体の軽量化やバッテリー容量の改良などが課題である。また、機体自体の落下を防ぐ安全性向上の対策も必要だ。
制度面では、ドローンを直接視認できない範囲でも運航ができるよう目視外飛行のルール策定が、特に都市部での実施に向けて急務であり、検討が進められている。道路インフラの定期点検では、従来は国土交通省の定める点検要領により近接目視点検が必須とされ、ドローン活用は不可能という課題があった。2019年の点検要領改定で、ドローンなどの点検支援技術の活用が明記されたのは大きな改善といえよう。
このように、ドローンを活用した物流・インフラ点検サービスの本格導入に向けて各方面で実証実験が進められているが、その結果、実用化に向けてクリアしなければならない技術・制度両面の課題が明らかになってきた(表)。
技術面の課題として、インフラ点検などに活用していくために位置精度を高める必要がある。橋梁やトンネル点検では、GPS(衛星利用測位システム)電波が受信できない場所でインフラに衝突せずに飛行することが求められる。そのためにはカメラ・LIDAR※2(光波によるセンサー)などのセンサーを搭載した上で自己位置を推定するSLAM※3(同時に地図作製を行う)などの高度技術の活用が必要になる。
物流用に向けては、ドローンは飛行可能距離や搭載可能重量が不足している。現在主流となっている電動マルチローター機では、例えば10kgの荷物を積んだ状態で20km飛び続けられる機体は少ない。機体の軽量化やバッテリー容量の改良などが課題である。また、機体自体の落下を防ぐ安全性向上の対策も必要だ。
制度面では、ドローンを直接視認できない範囲でも運航ができるよう目視外飛行のルール策定が、特に都市部での実施に向けて急務であり、検討が進められている。道路インフラの定期点検では、従来は国土交通省の定める点検要領により近接目視点検が必須とされ、ドローン活用は不可能という課題があった。2019年の点検要領改定で、ドローンなどの点検支援技術の活用が明記されたのは大きな改善といえよう。