マンスリーレビュー

2020年4月号トピックス4次世代インフラ

公共施設削減と地域の持続性

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2020.4.1

次世代インフラ事業本部富永 亜弓

次世代インフラ

POINT

  • 公共施設の見直しが住民に受け入れられないケースが多発している。
  • 行政は積極的な協議により住民のサービス低下への懸念払拭を。
  • 施設の総量削減を起点とした再活性化には民間のノウハウも有益。
人口減少や財政悪化に伴い、公共施設の長寿命化や規模縮小、廃止などが迫られている。国や自治体はトータルコストを抑えるため、建物の状態や利用実態などに関する調査を経て、公共施設ごとに「個別施設計画」をまとめている。しかし、施設の廃止や規模縮小につながる計画が住民に受け入れられず、実行できない例が少なくない。

背景には「総論賛成、各論反対」の論理がある。住民からすれば、人口減や財政難で施設の廃止や縮小がある程度はやむを得ないと理解はできても、身近な施設が減らされて行政サービスの質が低下すると考えると心理的な抵抗があるだろう。他の地域と比べて不公平な扱いを受けているのではないかとの疑念も残る。

住民の懸念を払拭(ふっしょく)するために行政は、地域の視点に立って公共施設の将来を住民と協議する場を積極的に設けるべきだ。協議の前に住民に対し、検討の進め方や地域の実情をできる限り正確に伝え共有する必要がある。そして個別の施設の存廃だけでなく、地域の全体最適の観点から議論を深めるべきである。意思決定に影響力をもつキーパーソンが誰かを事前に把握し、議論に参加してもらうことも欠かせない。

富山市は住民とのこうした協議を通じ、一部地域における公共施設の総量を面積ベースで約6割減らす案に合意した。公平さを担保する物差しとして全市的な公共施設再編の原則を定めてから約3年で、対象地域にある支所、公民館、ホール、体育館などについて個別施設計画をまとめ、一部施設の廃止・縮小にこぎつけた。

だが、行政の働きかけだけでは、公共施設の総量削減と地域の持続性とを両立させることはできない。住民の側にも目先の行政サービスにとらわれず、自治体の財政状態も理解した上で地域の将来に何が最適かを考える視点が求められる。民間のノウハウも加われば地域の再活性化も期待できる。例えば、閉校となった旧練成中学校(東京都千代田区)校舎は文化芸術振興のための多目的施設にリノベーション※1され、民間企業による運営によって魅力を高めている。行政と住民、民間企業というステークホルダーは持続可能な地域づくりに向け、それぞれの役割を果たすべきであろう。
[図] 行政、住民、民間企業に求められる役割

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