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2020年4月号トピックス6経済・社会・技術

50周年記念研究 第4回:社会課題解決型DXで持続可能な世界を実現する

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2020.4.1

未来構想センター福田 桂

POINT

  • 100億人時代に、現在の延長線上では資源消費が限界に達する。
  • 持続可能性確保には消費、循環、生産への配慮が不可欠である。
  • 社会課題解決型DXが豊かさと持続可能性を両立する。
経済成長や技術進歩により生活水準は世界的規模で向上したが、人類の生存基盤である地球環境の悪化をもたらしている。50年後の将来には世界の人口が100億人に近づき成長の限界に達すると懸念される。この状況を回避し、100億人が豊かで持続可能な暮らしを送り続けるためには、「消費の抑制」「循環促進」「環境負荷を低減させた状況での生産」が必要である(図)。その成否の鍵はICT高度活用の姿であるDX※1が握っている。

DXは企業の課題解決を主眼に発展してきた。今後は社会課題の解決に資するDXが重要となる。例えば消費では、ビッグデータによる需要予測の精緻化やブロックチェーン技術による需要側情報のリアルタイムでの把握により、必要な量を必要な分だけ必要なときに生産、出荷をすることが可能となり、過剰生産や流通ロス、エネルギーロスなどが低減する。循環でも、DXの進展に伴い、自動搬送車による無人回収、ロボットによる自動分別・加工、AIなどで需給マッチングが実現すれば完全再資源化も不可能ではない。

生産サイドにおいては、より少ないリソースで社会を持続させる義務が生じる。その結果、「最低限必要な資源供給の高効率化」「環境負荷の最小化」が求められる。農業を例に取ろう。高度なセンシング技術により作柄や病虫害発生状況などを即時に把握し耕作機器と連動させ、最小限の資源投入で収量の最大化を図ることが可能になる。

今後はより広域なDXの適用も進む。循環であれば、水、資源、エネルギーなど複数領域をトータルで捉えるエコシステムも立ち上がる。消費、循環、生産の全域を賄う需要・供給網の再編、あるいは現時点で想定もできないような改革も進むことだろう。

社会課題解決に資するDXは社会全体としての効率化を目指すため、個別の主体にとってはデメリットになることもありうる。需給バランスの精度向上は一歩誤ると製造事業者にとっては出荷量の削減にもつながりかねない。個別最適・部分最適ではなく社会課題解決、全体最適に取り組む推進役の存在が不可欠である。社会課題解決型DXの実現に向けて当社も一端を担っていく。

※1:Digital Transformation。

[図]安定的な供給と環境負荷最小化の両立を図るエコシステム