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2020年4月号トピックス5デジタル・イノベーション

DXの「2025年の崖」はマネジメント改革で克服

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2020.4.1

社会ICTソリューション本部鈴木 誠一郎

デジタル・イノベーション

POINT

  • DXのシステム導入では短期開発、新技術、モダナイゼーションが重要。
  • ビジネス環境の変化に対応しやすいアジャイル型開発に活路。
  • システム開発のマネジメント改革、高度人材育成に意義。
企業競争力維持・強化を促す「DX」※1の導入を検討する企業が増加している。しかし、企業内情報システムの開発・追加修正のあり方などの問題から、多くの企業においては、順風満帆とはいいがたい。DX化の遅れは日本経済にとっても損失となる。経済産業省のDXレポート※2によると、2025年までにDXの推進がなされなかった場合、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある。

これを「2025年の崖」という。同報告書では、旧態依然とした「レガシーシステム」の存在がDX導入を阻む一因と指摘している。

ビジネス環境の変化に応じて対応を求められるDXでは、システム開発の柔軟性の確保が重要な課題となる。併せて、システムのモダナイゼーション※3に取り組む際には、AI、RPA(ソフトウエアロボット)などの新技術の採用も検討する必要がある。これらの命題を並立させねばならないところにDX導入の難しさがある。

方策の一つとして、仕様変更へ柔軟に対応できる「アジャイル型」※4の開発が有効とされる(図)。従来の「ウォーターフォール型」※5の開発は、初期段階に機能定義を十分に行うことに時間と労力を費やす。一方、アジャイル型は実装単位に機能を分割して個別開発するため、小回りが効くとされる。必要に応じて実装単位ごとに並行開発ができれば時短効果は大きい。ただし、小規模開発に向く人材をマネジメントすることが求められる。この点が開発を成功に導く上での最重要事項といえよう。

そして、後工程の人材不足の問題もまた、大きな懸念事項である。アジャイル型で開発したDXシステムといえども追加修正(メンテナンス)は発生する。このフェーズにおける要員体制を維持しないと、ウォーターフォール型と同様、「ブラックボックス化」「レガシー化」が始まりかねない。その意味で、継続的にDXを推進するプロジェクトマネジメントに対応できる人材の育成に、注力する必要性は強まろう。仮にDX導入に失敗すると、デジタルデータの利活用ができないまま、システム維持もままならないリスクを抱える—という負のスパイラルにも陥りかねないのだから。

※1:デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation):業務改革を支援してビジネスそのものを大きく変革するICT。

※2:「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月)

※3:稼働中のソフトウエア資産などを活かしつつ、新しい技術を導入してシステム再構築を実施すること。

※4:開発単位を多数の小さな機能に分割し、小単位で実装とテストを繰り返すことで、短期開発を実現する手法。

※5:ソフトウエア工学で古くからある従来型の開発モデルだが、急な仕様変更が生じたシステムでは保守性に劣るとされている。

[図]アジャイル型開発のイメージ

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