マンスリーレビュー

2020年6月号トピックス2地域創生

宿帳を観光産業の攻守に使えるツールに

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2020.6.1

地域創生事業本部宮崎 俊哉

地方創生

POINT

  • 「宿帳」は昔から宿泊者の足取りを追う感染症対策ツール。
  • 新型コロナを機に全国で共通化して電子化すべきである。
  • 観光産業の反転攻勢に向けたデータ基盤としても活用を。
新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりによって、宿泊業や旅行業を中心とする観光産業は真っ先に直撃を受けた。その観光産業が実は、レガシーながら役立つ感染症対策ツールを保有しているのをご存じだろうか。昔から「新しい感染症を運ぶ存在」とされてきた旅行者の足取りを追う制度が旅館業法に組み込まれている。それが「宿帳」(宿泊者名簿)である。宿帳には宿泊者の住所、氏名、年齢、性別などが記載され、都道府県知事などの求めがあれば、自治体に提出する義務がある。

宿帳を電子化して、その全国データを共通基盤上で管理できれば、民泊を含め、宿泊施設を利用した感染者や濃厚接触者を追跡可能になる。海外からの旅行客が再び増えれば新型コロナの第二波が生じる可能性もある。全国規模の「電子宿帳」があれば、感染の再拡大に歯止めをかけるツールにもなりえるだろう。ただし、個人を特定できる情報であるため、旅館業法を所管する厚生労働省と営業許可を行う都道府県が共同で整備した基盤上で管理する必要がある。

全国的な電子宿帳は、感染症からの「守り」だけでなく、平時の「攻め」にも使える。観光地のマネジメントとマーケティングを一体的に担う組織であるDMO※1ごとに、旅行客の呼び込みに活用できるだろう。新型コロナ後の反転攻勢を実現すべく政府が予算化した「Go Toキャンペーン」※2は宿泊業や旅行業への補助を主軸とするが、補助を使って発行されたクーポンの利用状況などを電子宿帳に掲載すれば、施策の効果も検証可能だ。個人情報保護のため、マーケティングに使用する電子宿帳データは、匿名で加工・集計する必要がある(図)。

現状では宿帳は手書きが一般的であり、電子化の徹底にはさらなる工夫が必要だ。オンライン予約時の情報、あるいは決済時のクレジットカードやアプリなどの情報と連携することが有効であろう。そうすれば、多大な費用を投じることなく全国的な電子宿帳を実現できる。宿泊業で今まさに進もうとしているキャッシュレス化も後押しできる。

※1:Destination Management/Marketing Organization. 政府が提唱する「まち・ひと・しごと創生基本方針」には、地域の観光振興を戦略的に推進する主体として、日本版DMOの育成・支援が盛り込まれている。

※2:2020年度補正予算に1兆6,794億円が計上された。内閣官房、経済産業省、国土交通省、農林水産省が連携して取り組む。

[図]全国電子宿帳の利用イメージ

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