マンスリーレビュー

2021年7月号特集2デジタルトランスフォーメーション経済・社会・技術

官民連携による価値共創的な行政DXの推進

2021.7.1

公共DX本部清水 充宏

デジタルトランスフォーメーション

POINT

  • デジタル社会形成基本法の施行を契機に行政DXを加速させるべき。
  • データおよびデジタル技術を活用した国民本位の行政サービスが重要。
  • ベース・レジストリによる社会課題解決・官民データ利活用の推進を。

デジタル社会形成基本法が施行

2021年9月1日にデジタル社会形成基本法が施行され、デジタル庁が設置される。

コロナ禍の新常態にあって社会全体としてデジタル化の機運が高まっている今こそ、行政組織はDXを推進し、国民本位のサービス提供機関に変革していく時である。

政策立案段階からのデジタル利活用検討

行政DXは「データおよびデジタル技術を活用し、国民本位の行政サービスを提供することにより受益者利益を最大化するためのプロセス」だ。主役はあくまでも受益者(国民および民間企業)であることを忘れてはならない。

推進にあたっては、「政策立案時における意識変革」と「データおよびデジタル技術の利活用による行政サービスの変革」の両輪が必要となる。

法制度を安全、安心、正確、期限どおりに運用することが求められる行政においては、政策立案段階で、運用時のデータおよびデジタル技術の利活用を見据えた検討が肝要である。デンマークでは法制度立案の段階から運用時におけるデジタル技術の利活用を前提とした検討を徹底している。

日本も、デジタル庁だけでなく行政全体として、デジタルリテラシーの向上に資する継続的な人材の確保や育成が重要だ。そのためにはデジタル人材およびデジタル技術の利活用に対する制度所管部局の意識改革が求められる。

行政サービス変革においては、行政中心主義からの脱却が求められる。行政職員の生産性向上に加えて、国民・民間企業の利便性と使い勝手を向上させ、ニーズに寄り添ったサービス設計を推進していくべきである。

このためには、必要としている人に、適切なタイミングで、最適なサービスを、デジタルで完結するよう提供するプッシュ型でワンストップ型の行政サービスの推進が重要だ。

例えば法人設立、相続などの一連の手続きは複数の所管省庁にまたがっており、情報システムやデータが省庁ごとに分断されている。ワンストップ型行政サービスにおいては、利用者がそのことを意識しなくても一連の手続きを一気通貫に、簡便に完結できるよう提供していくべきだ。

上記の実現には省庁横断のデータ連携が不可欠となる。その基盤となりうる施策として、デジタル庁による「公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)」の整備(図)がある。
[図] ベース・レジストリの行政機関・官民横断利活用による価値共創の仕組み
[図] ベース・レジストリの行政機関・官民横断利活用による価値共創の仕組み
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出所:三菱総合研究所
法人設立手続きを例にとれば、法務省管轄の設立登記の申請から、国税庁、都道府県および厚生労働省管轄の各種届け出など、管轄部局をまたぐ多岐にわたる申請が必要になる。

国民本位の行政サービス推進には縦割り行政からの脱却に向けた意識改革が必要だ。そのうえで、ベース・レジストリなど新たな施策の利活用を通じて、各申請がワンストップで完結するのに加え、ワンスオンリー化(一度届け出た内容は繰り返し提出することを求めず再利用できること)を実現し、利便性や使い勝手向上を図る必要がある。この段階に至って初めて、行政サービスがDXされた状態にたどり着く。

官民連携による価値共創的な取り組み

上述したベース・レジストリは行政機関が部局ごとに保有・管理している、人、法人、土地、法律などのデータを横串で整備した、正確性や最新性が担保された社会基盤データベースである。

整備にあたっては、戦略やルール、対象やオープンデータ化の範囲について、民間のニーズや知見も結集し、官民連携による社会課題解決に資する価値共創的な取り組みを推進していくべきだ。

また、行政内の利用にとどまらず、民間の知恵やサービス、保有データと組み合わせ、連携させながら、官民双方の利益を最大化するものになるよう、民間からの後押しも期待したい。

例えば土地情報は、法務省、国土交通省、農林水産省および地方自治体などがそれぞれ保有しているが、正確性や最新性が必ずしも担保されている状況にない。

ベース・レジストリとして一元管理のうえ、オープンデータ化されれば、社会課題である所有者不明土地問題の解決や都市開発の推進に資するだろう。ベース・レジストリは社会課題解決や官民連携推進の万能な処方箋ではないが、縦割り行政を打破する新たな施策として、行政のみならず民間における新たなサービス開発やイノベーション創出にも寄与するよう期待したい。

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