行政DXは「データおよびデジタル技術を活用し、国民本位の行政サービスを提供することにより受益者利益を最大化するためのプロセス」だ。主役はあくまでも受益者(国民および民間企業)であることを忘れてはならない。
推進にあたっては、「政策立案時における意識変革」と「データおよびデジタル技術の利活用による行政サービスの変革」の両輪が必要となる。
法制度を安全、安心、正確、期限どおりに運用することが求められる行政においては、政策立案段階で、運用時のデータおよびデジタル技術の利活用を見据えた検討が肝要である。デンマークでは法制度立案の段階から運用時におけるデジタル技術の利活用を前提とした検討を徹底している。
日本も、デジタル庁だけでなく行政全体として、デジタルリテラシーの向上に資する継続的な人材の確保や育成が重要だ。そのためにはデジタル人材およびデジタル技術の利活用に対する制度所管部局の意識改革が求められる。
行政サービス変革においては、行政中心主義からの脱却が求められる。行政職員の生産性向上に加えて、国民・民間企業の利便性と使い勝手を向上させ、ニーズに寄り添ったサービス設計を推進していくべきである。
このためには、必要としている人に、適切なタイミングで、最適なサービスを、デジタルで完結するよう提供するプッシュ型でワンストップ型の行政サービスの推進が重要だ。
例えば法人設立、相続などの一連の手続きは複数の所管省庁にまたがっており、情報システムやデータが省庁ごとに分断されている。ワンストップ型行政サービスにおいては、利用者がそのことを意識しなくても一連の手続きを一気通貫に、簡便に完結できるよう提供していくべきだ。
上記の実現には省庁横断のデータ連携が不可欠となる。その基盤となりうる施策として、デジタル庁による「公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)」の整備(図)がある。
[図] ベース・レジストリの行政機関・官民横断利活用による価値共創の仕組み