マンスリーレビュー

2023年1月号トピックス1経済・社会・技術

大阪・関西万博のもうひとつの主人公

2023.1.1

営業本部今村 治世

経済・社会・技術

POINT

  • 2025年大阪・関西万博まで1,000日を切り準備が本格化。
  • 万博をにらんで活動するチームが関西を中心に生まれている。
  • こうしたチームがもつ「ストーリー」は社会を明るくする。

「万人博」に向けて

2022年10月に大阪・関西万博の公式説明会が大阪市で行われ、参加を表明している計150の国、地域、国際機関の代表が集まった。2025年の開催に向け、いよいよ準備も本格化してきた。

筆者は以前、万博が旧来型の「万国博」から、人の共創を原動力にして国や組織の境を越える「万人博」に変わっていくと主張した※1。今回は関西で見え始めた新たな万博の片りんをお伝えする。

盛り上がる関西各地

「子どもたちにワクワクする未来を伝えたい」。当社は2022年7月、大阪のラジオ局FM802、ソニー・ミュージックエンタテインメントと三者で、ほぼ1,000日後に迫った万博を祝福するイベント「TEAM EXPO FES」※2を主催した。大阪府箕面市の会場で音楽や恐竜、宇宙、食などのコンテンツに基づく「万博らしい」空間を創出。多くの子どもたちの笑顔を生み出し来場者は約5,000人に達した。

継続的な盛り上がりも生まれている。大阪のクリエーティブ企業の従業員ら有志が、万博をにらんだ共創のチーム「demo!expo」を立ち上げ、積極的に活動している。「このまま待っていてもあかん、もう勝手にどんどんやっていこうや」とばかりに、関西全体のパビリオン化を目指す「勝手にパビリオン」プロジェクトに沿った交流の場である「EXPO酒場」をすでに10回以上開催した。

「自発的、遊び、純粋さ」

これらの活動には、3つの共通点がある。

第1に、誰かに頼まれたからやっているわけではないこと。「進めたらおもろいやん!」と、多様な組織に属するメンバーが自発的に多くの人々を巻き込み活動を広げている。既存のルールに縛られず、できることをひねり出すムードがある。関西弁の「おもろい」には、面白いだけでなく「すてきな」「かっこいい」とのニュアンスがある。

第2の特徴は遊びの要素である。あたかも演芸の大喜利のように、万博というお題を勝手に解釈して企画や創作の上、表現している。これによる余裕や「遊びシロ」が、内輪に閉じないワクワク感や笑いを誘っている。

第3は目的が純粋かつ明確である点だ。FESであれば未来を担う子どもたちを笑顔にすること、demo!expoでは地域で活躍する人々が万博を通じて楽しく活動できるようにすることだ。万博のレガシーを残そうとの思いに共感する人々が、続々と集う流れが生まれている。

「いのち輝く」チームも主人公に

万博の主人公になれるのは企業や各国政府など公式な出展者だけではない。今回紹介したチームにも資格があるはずだ。こうしたチームが熱い思いや必死な努力を起点とする「ストーリー」によって人々の驚きや感動を呼び起こせば、大阪・関西万博は文字どおり「いのち輝く」※3ものになる。

大阪・関西にとどまらず国内外の多くの主人公たちがストーリーを生み出す。当社はその触媒となり、日本や世界を明るくしていきたい。

※1:MRIマンスリーレビュー2021年12月号「ドバイ万博から大阪・関西万博に向けて」。

※2:正式名称は「Road to 2025!! TEAM EXPO FES」。

※3:大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」である。