近年、ものづくりに大きなインパクトを与える技術として、3Dプリンタが世界的に大きな注目を集めている。本稿では、主として産業用の3Dプリンタについて、技術の種類と特徴、市場と今後の展望を考察する。
1.1 3Dプリンタとは何か
3Dプリンタは、3次元(3D)のCADデータをもとにコンピュータで薄い断面の形状を計算し、この計算結果をもとに材料を積層して3次元の造形物を得る技術を指す。通常の紙に出力する2次元(2D)のプリンタとの対比で直観的にわかりやすいことから、日本では3Dプリンタという用語が広く普及しているが、国際的にはAdditive Manufacturing Technology※1付加製造技術※2)という呼び方が正式とされている。本稿では、これ以降ASTM規格に従い、付加製造技術という表現を用いる。
1.2 注目を集めている理由
付加製造技術が注目を集めている背景としては、個人向け低価格機種が販売され、「個人でもメーカーになれる」といったフレーズとともに話題に取り上げられるようになったことが挙げられる。また、米国政府が製造業の国際競争力強化のための戦略的分野と位置付けたことや、日本や中国でも政府による関連技術への研究開発投資が行われるようになったことも大きい。その他にも、表1.1に示すさまざまな動きがみられる。
表1.1 付加製造技術をめぐる近年の国際動向
分野 | 変化 |
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各国政府 |
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技術革新 |
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市場 |
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その他 |
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出所:各種報道資料より三菱総合研究所作成
図1.1 付加製造装置の全体像
特に個人向け製品に関しては、家電量販店やメディアなどで目にする機会が増えたため、これらを代表的な付加製造装置としてとらえている人も多いかもしれない。しかしながら、図1.1に示す通り、付加製造装置は個人向けに展開されている製品とは別に、産業用製品の市場があり、造形精度や材料の選択性は格段に高い。したがって個人向け製品だけで付加製造技術全体ととらえると、その可能性を過小評価することになる。