コラム

Safety Biz~安全・安心を創る新しいビジネス~防災・リスクマネジメント

未来社会の安全・安心を共に創ろう

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2017.6.14

科学・安全事業本部堤一憲

Safety Biz

POINT

  • 災害の巨大化・頻発化、気候変動およびその影響の顕在化の一方で、新たな制度や技術の導入など、未来社会において安全・安心を脅かすリスクは増大します。
  • 将来における我々の安全・安心の確保は、これまでの「公」主体ではなく、「産官学民」が連携することでより一体感を持って急速に進めていかなければなりません。
  • 本連載コラム「Safety Biz~安全・安心を創る新しいビジネス~」では、将来の社会像および先端技術の進展を踏まえ、安全・安心に関する課題解決策と社会全体で考えるべき安全・安心ビジネスのあり方について提案していきます。 
日本列島は阪神・淡路大震災や東日本大震災といった未曾有の災害を経験しました。さらに火山活動の活発化だけでなく世界的な気候変動の影響も危惧されており、大規模災害への備えがより一層必要とされています。未来社会が直面する安全・安心に関わる課題は自然災害にとどまらず広範囲にわたり、電力・ガスの自由化などといった新たな制度の変更が新しいリスク要因にもなりえる側面があります。また、ここ数年、IoT(モノのインターネット)、BD(ビッグデータ)、AI(人工知能)などの先進技術の開発や現場活用が急速に進んでいます。様々な要因により現在及び未来の安全・安心を脅かすリスクの増大が進んでいる一方で、課題解決にも役に立ちうる新たな技術の大きな進展も見られる中、2020年の東京オリンピック・パラリンピックをはじめ日本全体が今後も変化していく未来社会において、我々は安全・安心に対してどのように向き合えばよいのでしょうか。

高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化、少子高齢化、社会経済における成長の低迷や社会の制度疲労に加え、東日本大震災などで一時的に高揚したはずの防災・危機意識も薄まってきています。こうした点を背景として、将来における我々の安全・安心の確保は、これまでの「公」主体ではなく、「産官学民」が連携することでより一体感を持って急速に進めていかなければならないという危機感が我が国社会に強まっています。我々を取り巻く様々な社会環境の変化は、脅威であると同時に好機と捉えることもできます。未来社会の安全・安心の構築に向けて、産官学民のそれぞれの視点を持って、社会全体が一丸となって取り組んでいくことが重要です。

既存のリスクだけでなく新たなリスクに対して、最新技術などを応用するなどして、新たな安全・安心ビジネスとして展開することも考えられます。例えば、熊本地震においては被災された方々の膨大なニーズに対してボランティアの技術・能力などで十分に応えることはできませんでしたし、複数の自治体間でボランティアのリソースを円滑に融通することもできませんでした。災害時にICT(情報通信技術)やAIなどの技術を駆使してボランティア需給の最適解を提供するようなビジネスを社会全体で展開することが重要でしょう。

これから本連載コラムにおいて、安全・安心に関わる課題解決策と社会全体で考えるべき安全・安心ビジネスのあり方について提案していきます。未来社会の安全・安心の確保のためには、防災・気候変動・健康・産業安全・セキュリティ等の各分野・対象における産官学民連携による対応、先進技術・高度情報技術の利活用、社会全体の安全・安心リテラシーの向上が不可欠です。我々は、未来社会における安全・安心に関する社会課題をビジネスで解決することを目指していきます。ぜひ皆さんも一緒に、未来社会の安全・安心を創っていきましょう。
図 安全・安心ビジネスによる未来社会のリスクへの対応 概念図
図 安全・安心ビジネスによる未来社会のリスクへの対応 概念図
出所:三菱総合研究所