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再エネ主力電源化に向けた電力システム上の課題について

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2019.5.23

環境・エネルギー事業本部入江 寛

環境・エネルギートピックス
太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)の導入量が増え続けている。2012年6月時点で約21GWであった再エネ全体の導入量は、2018年12月時点では約67GWとなった。2018年7月に閣議決定された第5次エネルギー基本計画※1では、2030年のエネルギーミックス(電源構成比率)の実現(再生可能エネルギーは電力量ベースで22~24%)とともに「再エネの主力電源化」がうたわれており、今後ますます再エネの導入が進展していくと予想される。

再エネは、温室効果ガス排出を抑制し、新規ビジネスの可能性を切り拓くエネルギー源として注目を集めている。一方、太陽光が多く降り注ぐ昼間に余剰電力が生じることや、設備配置の地域偏在が特定の送電設備に過剰な負荷をかけることなど、電力システムの運用を困難にする課題が顕在化している(詳細については、当社コラム「顕在化する再生可能エネルギー発電の出力抑制リスク」を参照いただきたい)。

これらに加え、「再エネの主力電源化」に伴う電力システム上の課題として、「慣性の低下」が今後顕在化すると懸念されている。

火力発電などの従来電源は「同期発電機」と呼ばれ、蒸気タービンの機械的な駆動力により、回転子が発電機内を回転することで交流電力を発生させる。事故などにより電力システム全体の需給に急激な変化が生じた際、同期発電機の回転子は自らの回転エネルギーにより、この変化を打ち消そうとする。したがって、同期発電機が多数ある電力システムは、個々の回転エネルギーの総和として、システム全体としての周波数変動※2に対する耐性をもつ。このような性質が電力システムの「慣性」と呼ばれている。
図 慣性のイメージ
図 慣性のイメージ
出所:三菱総合研究所
一方で、太陽光発電などの再エネはパワーコンディショナーと呼ばれる設備により直流を交流に変換して発電しており、同期発電機のような回転エネルギーをもたない。そのため、再エネの普及拡大に伴って電力システム上で運転する同期発電機が減ると、回転周期を保とうとする慣性が相対的に弱くなり、周波数が不安定になりやすくなる。その結果、大停電などのリスクが高まることになる。

この慣性低下を防ぐためには、電力システム全体としての対応が必要である。また、課題が顕在化した後、すなわち周波数が不安定になりやすくなってしまった後に対策を行うのでは時すでに遅しで、もとの健全な状態に戻すのが困難になる。再エネ導入が進み、比較的小規模かつ独立した電力システムをもつイギリスやアイルランドなどでは、早期に対策が採られている。

再エネ主力電源化は電力システム全体の変革をもたらすため、その過程で生じる重要な課題を的確に予測し総合的に対応していくことが求められる。当社では、電力分野の制度や市場、ビジネスの視点に加え、技術的観点からの検討も進めている。具体的には、慣性低下を含めた海外における検討事例の分析や、電力システム工学の理論に基づいたシミュレーション(定量分析など)を通じて、一般送配電事業者の対策検討支援や、再エネ事業者の投融資判断支援、メーカ・ベンダーの技術開発支援、官公庁の制度設計・技術開発プログラムの支援を手掛けている。これらの業務や、皆さまとの意見交換を通じ、将来にかけて安定的に再エネを統合できる電力システムのあり方を模索していきたい。

※1 https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180703001/20180703001.html(閲覧日:2019年5月16日)

※2 電力システムの需要と供給のバランスが崩れると、同期発電機の回転周期に相当する周波数が変動する。

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