この巨大な市場を狙って、世界の自動車メーカーや大手IT企業がEV、シェアリング(ライドシェア やカーシェア )、自動走行に係る技術開発や事業化でしのぎを削っている〔図表1-2〕。
EVに関しては、2010年前後からテスラ、日産自動車、三菱自動車が販売で先行していたが、近年、日米欧のその他の主要メーカーがEV市場に参入。中国でも新興メーカーを含めEVの開発・販売が拡大している。
シェアリングでは、米国と中国でライドシェアが普及している。米国Uber社は世界約600都市、中国の滴滴出行(ディディチューシン)社は中国約400都市で事業展開している。カーシェアでは米国や欧州の大手自動車メーカーが積極的に市場参入している。
自動走行に関する各国の取り組みも、ますます活発となった。日本はじめ米国、欧州、中国の自動車メーカーや大手IT企業が技術開発と実用化を競っている。
図表1-2 世界各社におけるEV・シェア・自動走行の取り組み状況
区分 |
内容 |
EV |
- 日本の日産自動車、三菱自動車、米国のテスラ、GM、欧州のVW、ルノーなどがEVを販売中。このほかに日欧の主要自動車メーカー各社がEVを開発
- 中国ではBYD(比亜迪汽車)、北京汽車、上海汽車などがEVを中国で販売中。新興を含め多くの自動車メーカーがEV市場に参入
- パナソニックとテスラは米国に巨大電池工場「ギガファクトリー」を2020年完成予定。投資総額は地元自治体と合わせて5000億円
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シェア |
- 米国発配車サービスUberは世界606都市で利用(2017年時点)
- 米国GM、Ford、ドイツBMWが2016年にカーシェア事業に参入
- 中国の滴滴出行(配車サービス)は中国約400都市で展開、Uber中国部門を合併し成長
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自動走行 |
- 日本ではトヨタ、日産、ホンダのほか、ソフトバンク、DeNAなどが自動走行技術を開発中
- 米国ではGM、Ford(自動車メーカー)、Uber(配車サービス)、Google(大手IT企業)などが活発に実証実験
- ドイツのアウディがレベル3機能(条件付運転自動化)を搭載した世界初の乗用車を2017年秋に発売
- 中国の百度(バイドゥ)が2020年までの完全自動走行と自動運転に関するプラットフォームのオープンソース化を目指す「アポロ計画」を2017年に始動
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出所:新経済連盟「ライドシェア実現に向けて」(2016/11、元出所はJuniper Research社)、総務省「平成29年度情報通信白書」、内閣官房「ITS・自動運転を巡る最近の動向」(H29/2)、この他報道記事に基づき三菱総合研究所作成
競争の背景には、2030年までに高度な車載用蓄電池や自動運転システムといったコア技術が出そろうことがある 〔図表1-3〕。
車載用蓄電池について国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発目標(2015年作成)では、2030年代にエネルギー密度を5倍、単価を1/7にすることを目指す(※2)。2025年頃にEVの価格がガソリン車並みになるとの米国シンクタンクの予測が(※3)、現実味を帯びてきている。また、自動走行技術に関するロードマップを首相官邸が作成、2025年をめどに高速道路や限定地域でのレベル4(高度運転自動化(※4))が実現するとしている。
図表1-3 車載用蓄電池と自動走行に関する技術予測例
出所:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「車載用蓄電池分野の技術戦略策定に向けて」p4(2015年)、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部「官民 ITS 構想・ロードマップ 2017」p26(平成29年)に基づき三菱総合研究所作成