マンスリーレビュー

2017年4月号トピックス1スマートシティ・モビリティ

これからの再エネ事業推進は地域創生が鍵

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2017.4.1

地域創生事業本部馬場 史朗

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 太陽光発電事業は、買取価格低下と未稼働案件取り消し措置を経て新たな段階へ。
  • プレーヤーの中心は大手資本から地域事業者へ移行する。
  • 自治体と地域金融機関の連携により、地域事業者の取り組みが前進。
2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が開始されて間もなく5年。太陽光に偏った導入、国民負担の増大といった諸課題が顕在化している。この課題に対応すべく事業用太陽光の買取価格は大幅に引き下げられ、当初の40円/kWhが2017年度は21円/kWhとなった。この4月には、改正FIT法が施行され、新たな認定制度の創設とそれに伴う未稼働案件の認定取り消し、さらには事業用太陽光の買取価格に関する入札制度などが導入された。

一連の変化により、大手事業者は高い投資収益性が期待できなくなり、事業参画が減少するなど、その存在感が薄れていく可能性が高い。また、認定を受けた事業者がもろもろの準備不足のため、2017年3月31日までに電力会社と接続契約締結に至らず認定取り消しとなり、電力系統の接続枠が相当量(数十GW)空くとみられている。

一方、新たな事業機会を掴むプレーヤーの台頭も予見できる。かねてよりFITを契機とした地方創生への期待もあり、今後の事業組成は地域事業者が鍵を握る。事業用太陽光発電事業は、大手資本による大規模開発がピークを迎えつつあり、地域を起点とした新たな形態が主流になると考えられる。

地域事業者による太陽光発電事業を推進するためには、不足しがちな事業者の信用力を自治体と地域金融機関が連携して補完することが重要である。例えば、事業の蓋然性・収益性・実施体制に加えて、雇用確保や地域振興への取り組みなどの地域貢献度も加味して事業計画を評価した上で、事業を認証する。その結果、自治体は事業開発段階の資金を基金などで支え、税財政措置によって収益性向上を促し、地域金融機関は事業への融資とともに、経営の監視を通して事業運営の健全化を支えるという連携である。

参考にしたい事例に熊本県の「くまもと県民発電所」認証制度がある。認証審査会が認証した事業に対し、公有地の貸し出し、各種許認可申請支援、地域振興取り組みへの支援、県内金融機関からの融資が提供されるものだ。太陽光発電事業で複数の実績を蓄積し、今後は同制度を小水力、地熱・温泉熱などへ展開することも試みている。
[図]地域事業者による再エネ事業推進のイメージ