マンスリーレビュー

2017年4月号トピックス4経営コンサルティング

進化するオープンイノベーション

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2017.4.1

経営コンサルティング事業本部藤本 敦也

経営コンサルティング

POINT

  • 日本企業のオープンイノベーションへの取り組みが進化している。
  • 事業開発における発展性と確実性を両立するやり方に注目したい。
  • 初期ビジネスモデルを起点とした2種類の連携が効果的である。
かつての日本企業は、研究開発から事業化まで社内で完結する自前主義が強いといわれてきた。一方、世界では自社だけでなく社外のさまざまな資源を活用するオープンイノベーションが普及し、日本企業でもその取り組みが増えている。

その一形態として、当初から一定以上の事業規模を求める企業では、軌道に乗っている他社の事業をM&Aで獲得することもある。ただし、自社とは異なる組織風土で、すでに完成された他社のビジネスモデルを経営できる日本企業は限られており、狙いどおりの成果や波及効果を出すことは容易ではない。

最近は、先進的な新事業創出を狙うために、社外を巻き込んだビジネスアイデア・コンテストという形態が盛んである。しかし良いアイデアがあっても、日本企業では実績がないものを社内で評価することは難しく、事業性の検証に向けた追加投資の合意形成さえできずに多くは頓挫している。

完成した事業を取り込むと発展性に課題があり、ゼロベースすぎると確実性に難が生じる。そこで発展性と確実性を両立する有効なオープンイノベーションに注目したい。「少数顧客で検証された初期ビジネスモデル」から他社と協業を始める形態で、「①自社の初期ビジネスモデルを起点に、補完する要素を外部から調達」「②他社(スタートアップなど)の初期ビジネスモデルを起点に投資し共創」の2種類がある。

①の代表例に大阪ガスの取り組みがある。同社は2009年から技術ニーズを公開し、他社や大学との連携により水素製造装置の競争力強化などに成功している。大阪ガスが設計したビジネスモデルに、不足する要素技術を外部調達して完成させた形だ。

②の事例はまだ少ないものの、富士通アクセラレータープログラムなどが該当する。初期ビジネスモデルをもつスタートアップ企業に焦点を絞った上で、富士通の資金やチャネルなどを提供して共創に取り組んでいる。

今後のオープンイノベーションにおいて、大企業とスタートアップの組み合わせなど、初期ビジネスモデルを起点とした連携の創意工夫が重要となるだろう。
[図]各段階に有効なオープンイノベーション