昨今、欧米を中心に世界で社会の分断が顕在化した。米国では、差別的な発言をするトランプ氏が大統領選に勝利した後、移民や非白人、リベラル層によるデモが頻発している。欧州諸国でも、反EU、反移民を主張する政党が支持を伸ばしている。
社会の分断はどの程度進んでいるのか。社会調査結果からみると、2000年以降、米国は社会と自国議会への信頼低下が進んでおり、社会や政治における国民の一体感が悪化した。スペインやポルトガルなど南欧諸国でも同様だ。これらの国は共通して住宅バブル崩壊を経験しており、その後の金融危機で金融機関が政府に救済される中、債務返済に苦しむ国民の間に社会や議会への不信が広がった可能性がある。
ちなみに、英国は16年6月の国民投票を受けてEU離脱を選択した。大衆と支配階層の認識、EU加盟の恩恵を受ける都市部と受けない地方部の投票行動の違いが鮮明になったものの、社会調査結果からは社会や自国議会への信頼の低下はみられない。むしろ欧州議会への信頼低下がEU離脱につながったと考えられる。
社会への信頼と1人当たりGDPには正の相関がある。Knackら研究者は、信頼が低い社会では、雇用主が、有能だが知らない人ではなく、能力は劣るが縁故があって信頼できる人を採用してしまう可能性などを示唆し、結果として経済活動が非効率になると指摘している※1。当社の欧州各国のデータ分析では、社会調査で「たいていの人は信頼できる」と回答する人の割合※2が10%増加すると、1人当たりGDPは0.4%程度高まるという相関を得ている(図)。
このように社会や政治への信頼低下がその国の経済成長の重石となる可能性が高い。国家の先行きを展望する上で、各国の人口動態や投資状況といった従来指標だけでなく、信頼感の動向にも注目して経済を判断する重要性が増すであろう。例えば、米国は、トランプ大統領が不法移民の過剰な排除など差別を煽る政策を主張し続ければ社会の分断が深まりかねず、経済への悪影響リスクが高まる。
社会の分断はどの程度進んでいるのか。社会調査結果からみると、2000年以降、米国は社会と自国議会への信頼低下が進んでおり、社会や政治における国民の一体感が悪化した。スペインやポルトガルなど南欧諸国でも同様だ。これらの国は共通して住宅バブル崩壊を経験しており、その後の金融危機で金融機関が政府に救済される中、債務返済に苦しむ国民の間に社会や議会への不信が広がった可能性がある。
ちなみに、英国は16年6月の国民投票を受けてEU離脱を選択した。大衆と支配階層の認識、EU加盟の恩恵を受ける都市部と受けない地方部の投票行動の違いが鮮明になったものの、社会調査結果からは社会や自国議会への信頼の低下はみられない。むしろ欧州議会への信頼低下がEU離脱につながったと考えられる。
社会への信頼と1人当たりGDPには正の相関がある。Knackら研究者は、信頼が低い社会では、雇用主が、有能だが知らない人ではなく、能力は劣るが縁故があって信頼できる人を採用してしまう可能性などを示唆し、結果として経済活動が非効率になると指摘している※1。当社の欧州各国のデータ分析では、社会調査で「たいていの人は信頼できる」と回答する人の割合※2が10%増加すると、1人当たりGDPは0.4%程度高まるという相関を得ている(図)。
このように社会や政治への信頼低下がその国の経済成長の重石となる可能性が高い。国家の先行きを展望する上で、各国の人口動態や投資状況といった従来指標だけでなく、信頼感の動向にも注目して経済を判断する重要性が増すであろう。例えば、米国は、トランプ大統領が不法移民の過剰な排除など差別を煽る政策を主張し続ければ社会の分断が深まりかねず、経済への悪影響リスクが高まる。
※1:Knack,Stephen and Keefer,Philip(1997)“Does Social Capital have an Economic Payoff?: A Cross-Country Investigation”Quarterly Journal of Economics 112(4),pp.1251-1288.
※2:「たいていの人は信頼できますか。信頼できる=10、できない=0としたときに0~10で評価してください」との質問に対する回答を加重平均して算出した値を用いて推計。
この値が1だけ高まったときに、「たいていの人は信頼できる」と回答する人が10%pt上昇すると解釈している。