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2017年4月号トピックス3デジタル・イノベーション

ものづくり企業のIoT活用導入時に必要な考え方

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2017.4.1

ものづくり革新事業センター田中 理史

デジタル・イノベーション

POINT

  • ものづくり企業では、工程改善の一手法としてIoTの導入が重要視されている。
  • しかし、先行投資から始めようと考えるとIoT導入は滞りやすい。
  • 現有データを用いてIoT効果の事前想定ができていると導入が円滑になる。
日本の製造現場では、絡み合う多くの工程を改善し続けることで、ものづくりの強みを発揮してきた。生産拠点の海外展開や技能者の高齢化など事業環境が変化する中、さらなる生産効率と品質の向上を生み出す改善方法の進化が重要になっている。IoT導入による進化もその一つである。

従来のIoT導入は、まずIoTへの先行投資を行った上で、課題やボトルネックを見える化し、その効果を確認するというアプローチが多い。今までとは異なる人材投入と製造実行系システムの準備という大きな先行投資が必要なため、IoT導入による効果が想定しづらい場合は的確な投資判断が難しくなり、導入の障壁になりやすい。

この状況を打開するため、当社は新たなアプローチを考え、その仕組みの提供と実証に取り組んでいる※1。その一例を紹介する。

ある企業では「匠の技の伝承」を課題と捉え、他社のIoT活用事例を詮索していたが、自社でIoT活用方法を具体化できずにいた。当社は、その企業の各部署から集めた「ものづくりの5M※2データ」を科学的手法で解析し、データ間の関係性を把握した。その結果、伝承すべき匠の技が「都度異なる材料特性に合わせた、最適な治具選定および設備調整」であることを特定し、IoTの活用対象を材料特性の把握と治具/設備調整に設定した。さらに、もう一つのM(Money)を付加し、「匠の技の伝承」で期待される歩留まりや稼働率の改善効果を試算した。これによりIoT本格導入へとつながったのである。

新しいアプローチは、明確な事業課題設定を出発点とし、先行投資なく自社データからIoT活用方法を特定した上で投資効果を想定する考え方である。IoT導入は、①自社の事業課題を見据えた「やりたいこと」の明確化、②自社の現有データをつなぎ合わせた検証、③IoT活用効果を踏まえた「やるべきこと」の見極め、というステップが重要である。IoT導入検討の第一歩として他社事例を参考にするケースが多いが、IoTで解決すべき課題自体を見失いがちになる。また課題が同じでも、実行可能な解決策は企業ごとに異なるため、他社のやり方をそのまま適用するのは得策ではない。

※1:当社は横河ソリューションサービスとの協業に基づいて、先行投資なくIoT導入の事前検証が行えるプラットフォームを整備し、「ものづくり競争力強化支援サービス」を提供している。

※2:ものづくりの5Mとは「Material(材料)」「Machine(機械)」「Method(方法)」「Man(ひと)」および「Measurement(検査)」を指す。

[図]IoT活用に向けた第一歩の踏み出し方

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