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2017年4月号トピックス2ヘルスケア・ウェルネス

ゲノム医療のための情報インフラと産業育成

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2017.4.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部谷口 丈晃

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 欧米は国家主導でゲノム医療の研究と産業育成を同時に推進。
  • ゲノム医療はデータベースと情報技術が大きな価値を生む。
  • 日本も公の情報インフラと民の情報サービスを両輪で強化すべき。
ゲノム情報(遺伝情報全体)に基づいて治療法や薬剤の選択が可能になってきており、医療に実装されつつある。いわゆる「ゲノム医療」である。日本でも本格化し始めているが、欧米は日本より大幅に先行している。

アメリカはゲノム情報を活用した個別化医療への取り組み(Precision Medicine Initiative)を掲げ、イギリスは国営企業のゲノミクス・イングランドがゲノム医療に対する大規模実証研究の体制構築を進めている。ゲノム情報に加えて、病気の種類や生活習慣、人種など多種多様な情報を幅広く蓄積して活用することで、診断・診療の精度向上や医師に対する意思決定の支援、創薬への応用を目指している。

この実現に向け、欧米では公共データベースを構築して、ゲノム情報の登録と共有を世界に呼びかけている。これを用いて研究を行うことで、世界全体でより大きな成果が得られるとうたっている。

同時に、情報技術を活用してゲノム情報に基づいた診断サービスや情報ソリューションを提供する企業の育成も進めている。アメリカ国立がん研究所ではクラウド環境を整備し、ゲノミクス・イングランドによる情報技術開発では研究に参加する複数企業が提供する資金や環境を活用して開発競争を行っている。独自に情報技術を駆使してデータを蓄積している企業は多数存在しており、その内容を非公開にしてサービスを行うことで、先行者利益の確保を狙っている。

日本は、政府主導で公共データベースに参加することで、医学の前進に貢献しつつ、日本単独では得られない情報インフラを確保できる。その際、ゲノム医療産業の育成方策を併せもつことが望まれる。国が構築した情報インフラを公的機関が独占的に利用している現状を変更し、民間が情報インフラを活用できるようにする。これによって、日本でも情報サービス企業が開発競争し、ゲノム情報から新しいサービスを創出する機会が増え、ゲノム医療の産業化を進めていけるだろう。
[図]ゲノム医療の産業化を進めるために

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