マンスリーレビュー

2018年6月号トピックス4デジタル・イノベーションヘルスケア・ウェルネス

AIが医療のあり方を変える

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2018.6.1

先端技術研究センター吉成 泰彦

デジタル・イノベーション

POINT

  • 医療分野でのAI活用は研究から実用化の段階へ。
  • 画像解析による判定で医師の診断力を超えた例も。
  • 医師と患者を支援するAIがサービスの向上を後押しする。
医療分野でのAI活用が加速している。背景には、医療情報のデジタル化によって検査、治療、投薬をめぐる膨大なデータが蓄積されている点がある。AIが持ち味とするディープラーニング(深層学習)の材料が、十分に整ってきたのだ。この結果、研究段階から実用化に向けて、大きく踏み出しつつある。

活用面で先行しているのは、医師を支援するAIである。特に医用画像の解析や、最適な治療法を探すといった分野で、研究例の多さが目立つ。医用画像を基に乳がんのリンパ節転移を検出する能力に関しては、2017年末にAIによる解析が人間の医師による診断を上回ったとの報告すらある。2018年4月には米食品医薬品局(FDA)が網膜症を診断するAI検査機器の販売を許可した。放射線診断医の不足が深刻な日本ではとりわけ、AIによる医用画像解析への期待は大きい。医師を支援するAIは数年以内に、現場に広く普及するだろう。

医師ではなく患者を支援するAIも有望である。スマホやウエアラブル端末を通じて画像や心拍数などのバイタルデータを読み取って、判定を行う仕組みだ。その際は個人情報の取り扱いに、十分な配慮が必要となる。

体調が優れない際に判断に迷った結果、不要な受診をしてしまったり、受診を控えて重症化を招いてしまった経験は、誰しもあるのではないだろうか。AIがその時点の体調をチェックした上で、軽いと判断した場合はセルフメディケーション(自己対応)を、重症化する恐れが大きい場合は病院に行くよう勧めてくれるようになる。そうなれば、不要な受診によるロスも、受診しないことによるリスクも、ともに減らすことができる。中国では、すでにこうしたAIの活用が、一部地域で始まっている。

将来は、病院に行く必要はないとAIが判断すれば、処方薬や治療器具が宅配されてきてセルフメディケーションをすることが一般的になるかもしれない。そうすれば医療現場の混雑は大幅に緩和される。AI活用の加速によって、医師不足の解消や医師の専門性深化を通じ、医療サービスがさらに向上していくよう期待したい。
[図]医療向けAIの代表的な機能と期待される効果

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