マンスリーレビュー

2018年9月号トピックス1ヘルスケア・ウェルネス

市民主体の医療情報プラットフォーム構築を

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2018.9.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部梁瀬 鐵太郎

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 適切な専門医に出会えず、診断や治療に悩む患者は意外に多い。
  • 診療情報や日常生活情報が十分に活用されていないのが一因。
  • 市民側がヘルスケア情報を管理する民間プラットフォーム構築を。
かかりつけのクリニックを受診したのに症状が改善しないままの人は意外に多い。適切な専門医にかかれば、最適な診断や治療をすみやかに受けられるはずである。

こうした食い違いが起こる一因として、カルテに記載されている患部の所見、投薬や検査結果などの診療情報がなかなか共有されない点が挙げられる。医師が自ら下した診断結果を正しいと判断した場合は、診療情報を外部に提供しないのが通例だからだ。このため、患者が別の医療機関に通い出したとしても、その機関の医師が過去の診療情報を知るのは難しい。加えて、体温や血圧などの日常生活情報も見逃せない。家族のちょっとした「気づき」が、診断の重要な鍵になる場合もある。

現在、地域ごとに医療機関の間で診療情報を共有する公的な基盤として「地域医療連携ネットワーク(EHR : Electric Health Record)」の構築が進められている。しかし、IT基盤を構築すれば診療情報の共有や日常生活情報の蓄積が進むとは限らない。また、公的な支援だけではサービスが行き届かないのが実情であり、EHR運営の主体となることが多い自治体にとっての費用負担も重い。

解決策として「市民自らがヘルスケア情報を管理する民間プラットフォーム」の構築を提案する。厚生労働省が「診療情報の提供等に関する指針」を定めて医療従事者に対し、患者への積極的な診療情報提供を求めていることが、構築の追い風となろう。患者が医療機関から入手した診療情報と、自身の日常生活情報を、プラットフォーム経由で複数の専門医に提供し、診断などに関する「助言」を受ける仕組みだ(図)。

運営主体としては「個人データをバンキング(預かって安全に活用)する」機能を満たせる信託銀行や、通信事業者などが想定される。助言代を含めた利用手数料を運営費に充てれば、収益も確保できるだろう。

また、患者・家族から寄せられた情報を、本人の同意を前提として、新薬開発などに活用すれば、医療・製薬業界の研究開発に寄与することも期待できる。市民自らの判断でヘルスケア情報を管理・運用する時代が来ているのだ。
[図]市民自らがヘルスケア情報を管理する民間プラットフォーム

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