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2019年4月号トピックス6地域コミュニティ・モビリティ

「都市鉱山」の活用に向けて

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2019.4.1

政策・経済研究センター清水 紹寛

地域コミュニティ・モビリティ

POINT

  • 2050年には世界的な鉱物資源の深刻な不足が懸念される。
  • 資源小国と言われる日本だが「都市鉱山」の規模は世界有数。
  • 都市鉱山の活用に向け、再資源化技術の確立と循環システムの整備を。 
国連の推計によると、2050年には世界人口は98億人に達する。食料や水、エネルギーなどに加えて、鉱物資源は特に深刻な不足が懸念される。

物質・材料研究機構のレポート※1によれば、新興国の経済発展による消費急増に伴い、2050年にかけて鉱物資源の枯渇リスクは高まる。需給バランスの見通しが特に立たないのが、①ベースメタルである銅・鉛・亜鉛・スズ、②貴金属の金や銀、③液晶パネルの電極の原料に使われるレアメタルのインジウム、などである。これらの金属は、採算を考慮せず、存在が確認されている全ての埋蔵量を採り尽くしたとしても、需要を満たせないという。

解決策としては、節約や代替資源の開拓のほか、使用済みとなって廃棄された工業製品の「都市鉱山」から再資源化する方法などがある。実は、日本の都市鉱山には、銅や鉛で世界全体の埋蔵量の5%前後、金・銀では10%前後にあたる量が眠っている※2。日本は天然資源に恵まれていないとされるが、都市鉱山を含めれば、世界有数の資源保有国との見方もできるのだ。

再資源化の手法では、従来から言われている「リユース(製品の再利用)」、「リサイクル(資源単位の再利用)」に加え、両者の中間とも言うべき部品・部材の単位で再生を行う「リフレッシュメント」の技術が開発されつつある。例えば、スマートフォンや電気自動車(EV)に使われるリチウムイオン電池の再生に適用することが考えられる。リチウムイオン電池のカソードと呼ばれる電極部材の粒子を取り出して一定の化学反応をさせると、再利用が可能になるとの研究結果が報告されている※3。資源単位の再生に比べてコスト的にもペイする可能性が高い。これらの手法による、多様な循環サイクルが求められる(図)。

併せて、本来の天然鉱山と同様、都市鉱山をペイさせるには、大量の資源を効率よく回収して濃集する仕組みが不可欠である。そのためには、売り切り型ではなく、破棄に至るまでの管理を徹底できるシステムを整えなければならない。以上のような新技術とシステムが、都市鉱山のフル活用につながるのである。

※1:https://www.nims.go.jp/research/elements/rare-metal/probrem/dryness.html

※2:サステイナビリティ技術設計機構による試算。
http://susdi.org/wp/data/post-90/

※3:Yang Shi, Gen Chen, Zheng Chen(2018), Effective regeneration of LiCoO2 from spent
lithium-ion batteries: a direct approach towards high-performance active particles

[図]「都市鉱山」活用に向けた多様な循環サイクル