マンスリーレビュー

2019年4月号トピックス4スマートシティ・モビリティ食品・農業

農業の担い手の若返りに向けて魅力ある職場環境の実現を

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2019.4.1

地域創生事業本部水野 友美

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 農業の担い手問題に明るい兆しが見えてきた。
  • 若者の定着に向け魅力ある職場環境の整備が必要。
  • ポイントは、働く意欲を維持するための仕組みづくりである。  
日本の農家数は減少し続けている。それとともに農地の集約と営農規模の拡大、組織化が進んでおり、新技術の導入拡大によって生産性は高まりつつある。農業就労者の高齢化が指摘されて久しいが、新たに農業を始めた「新規就農者」※1に限れば、49歳以下の就労者の比率は10年間で9%ポイント近く増加した(図)。農業経営体などに「就職する」など、就労形態の変化による若手の参画は、これからの農業の担い手問題を解決する上で一考に値する。

農業における働き方改革の動きとしては、2015年7月に設立された、リーフレタスを水耕栽培で生産、販売するウーマンメイク株式会社(大分県国東市)※2の取り組みが参考になる。新たな担い手として女性の活用に積極的で、10代から60代まで幅広い年齢層の女性が同社で生産に従事している。栽培にかかる作業の軽量化や機械化、柔軟な勤務形態の適用など女性の働きやすさを追求することで、ライフステージに応じて働くことができる環境を整えた。このような取り組みが評価され、2018年には国から「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」※3の特別賞を受賞している。

有限会社アグリマインド(山梨県北杜市)では若手のキャリア形成を支援し、組織的なトマト栽培に取り組んでいる。日射量に恵まれた地の利を活かし、先端技術による環境制御と生産計画により、日本トップクラスの10アールあたり80トンという収量を達成した。同社は大学で農業を学んでいる学生に対し、「幹部候補生への登用もある」などのキャリアイメージを明確に示してアピールしている。防除管理者や栽培管理者など重要な役職をインセンティブとして与え、実地での育成も綿密に施している。「土日に休める農業」など就労環境のさらなる改善も目標として掲げている。

ウーマンメイクに見られる「多様な働き方」への対応や、アグリマインドが実践する「キャリア形成支援」「インセンティブ付与」は若い働き手のモチベーションを向上させる。農業以外の産業のように「成果の可視化」「評価への納得感」など働く意欲を維持するためのさらなる仕組みづくりにも取り組むべきである。

※1:新規自営農業就農者、新規雇用就農者、新規参入者の合計。
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sinki/gaiyou/

※2:業績は好調で2017年6月期に4,200万円の売り上げが、2018年6月期は、6,200万円に拡大している。

※3:内閣官房と農林水産省が「強い農林水産業」「美しく活力ある農山漁村」の実現に向けて地域の活性化、所得向上に取り組んでいる優良事例を選定し、全国に発信している。2014年の第1回から毎年実施。

[図]新規就農者の年齢構成の推移(2007年と2017年)