マンスリーレビュー

2019年9月号 ヘルスケア・ウェルネス

理にかなった健康経営を進めるために

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2019.9.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部大橋 毅夫

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 企業健保の体力が高齢者医療による負担増で限界を迎えている。
  • 健康な卒業生(定年退職者)の輩出が歯止めをかけるポイント。
  • 健康づくりの成果をデータで客観的に評価し、生産性向上との両立を。
企業の健康保険組合の体力が限界に近づいている。高齢者の医療を支える拠出金負担が増え続け、組合の財政を圧迫しているためだ。団塊の世代が後期高齢者となる2022年には半数以上の健保で、保険料負担に高齢者向け拠出が占める比率が50%を突破する見込みだ。健康保険組合連合会によると、過去10年で被保険者1人当たりの年間保険料負担は11万円超も増えた。

現行制度では社員に高い報酬を払っている企業の健保ほど負担が重くなっている。後期高齢者支援金は支払い能力に応じた総報酬割、前期高齢者納付金は保険者間の財政調整によって拠出額が決まっている。2018年度予算ベースで、約2,880万人が加入している大企業の健保組合と、約3,950万人が加入する中小企業の「協会けんぽ」の拠出額は同じであることになる(図)。加入者1人当たりで見ると、大企業の健保は中小企業よりも約4割多く負担している。支払い能力に応じて拠出額が決まる現在の仕組み では、企業にとって従業員の健康づくりに対するインセンティブが働かない。そのため、高齢者の増加に伴う医療費増大に歯止めがきかない構造といえる。

解決策として考えられるのは、報酬の高低だけではなく健康づくりの達成度も加味して拠出額を決める仕組みの導入である。企業が健康な卒業生(定年退職者)を増やし高齢者の医療費抑制に貢献すれば、企業と健保からの高齢者向け拠出額を減らすことができる。こうした理にかなった仕組みになれば、企業も健康経営を進めようとするはずだ。そのためには企業と健保による健康づくりの成果を評価する客観的な基準づくりが不可欠だが、健診・レセプト(診療報酬明細書)データといったビッグデータによる予知予測技術、ウエアラブルデバイスやアプリを駆使した行動変容の仕組みを活用すれば可能であろう。

生活習慣病などの健康課題は業種・業態や職種によって影響を受けるというエビデンスも出始めている。経営者は、従業員の健康増進と生産性向上との両立を目指すべきだろう。
[図]高齢者医療支援の体系(2018年度予算ベース)

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