マンスリーレビュー

2019年9月号 デジタル・イノベーション

筋肉質なデジタル環境への変革

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2019.9.1

コンサルティング部門 社会ICTソリューション本部牧野 健太郎

デジタル・イノベーション

POINT

  • 企業はIT関連予算の8割弱を現行ビジネスの維持・運営に費やしている。
  • 前向きな投資を増やすには「見える化」による工数削減が非常に有効。
  • デジタル化実施の後もリバウンドしない筋肉質な環境の維持が肝要。
企業はAIやIoT、クラウドコンピューティングといったデジタル技術を導入して業務効率化や顧客対応強化を進め、常にビジネスモデルの変革を追求する必要がある。こうしたデジタル化戦略の早期策定と実現には、リソースの適切な配分が欠かせない。しかし、企業のIT関連予算のうち、現行ビジネスの維持・運営向けが占める比率は2018年度まで数年間、8割弱の水準で高止まりしている。その3年後に平均66%に抑える計画*1であることからすると、目標と現実とが大きく乖離(かいり)しているのである。

前向きな投資を増やせないのは、現行システムの維持・運営にコストがかかりすぎるからである。相次ぐ改修でシステムが複雑化、肥大化して管理が困難になっていること、高齢化で退職者が増えているベテラン人財のスキルやノウハウが、若手や中堅に継承されていないことなどがその背景にある。

有効な打開策は、プログラムの構造や関連性を「見える化」するツールの導入・活用である。経験年数に裏打ちされた個人のスキルやノウハウに依存しなくても、システム改修で影響を受ける部分を容易に特定でき、調査やテストの効率化を図ることが可能になる。また、稼働していない不要資産を廃棄(スリム化)することで、それ以降の余分なシステム改修作業などを減らせる。当社の経験則として、見える化を行えばシステム改修作業全体の10~15%程度の工数は削減可能である。

なお、現行システムの複雑化・肥大化が再発(リバウンド)しないよう、筋肉質な環境を維持することが肝要である。そのためには見える化だけではなく、不要資産を廃棄する判断基準や目標、プロセス、体制などを、あらかじめ定めておく必要があろう。いったん減量に成功しても体重計に乗り続けるだけでは、リバウンドは防げないのだ。

こうした一連の措置によって自社システムに精通した要員の余力が創出できるため、外部に頼らずにデジタル化戦略を早期に実施に移す環境が整う(図)。その際に経営層はシステム維持・運営を現場任せにしておくべきではない。むしろ、積極的に現場の実態を把握した上で、デジタル化戦略を成功に導く意思決定をスピーディーに行うべきである。
[図]デジタル化戦略の策定・実行に必要な変革

*1一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査報告書2019」によると2018年度の実績は77.5%。2014年度は79.2%だった。

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