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2019年10月号トピックス2情報通信

5Gの真価発揮に向けた基盤整備

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2019.10.1

コンサルティング部門 デジタル・イノベーション本部伊藤陽介

情報通信

POINT

  • 次世代通信規格「5G」は2019年に普及元年を迎えた。
  • B-B-Xビジネスにおける官民連携、民民連携が整備拡大の鍵。
  • 多様な共創、新規参入が新たなIoT時代を促す。
新たな移動体通信規格である「5G」は、2019年9月に国内でプレサービスが開始されるなどして普及元年を迎えた。「高速で大容量」「低遅延」「同時多接続」などの特性を活かして、現在主流の4Gでは実現できない事業領域へのサービス展開が期待されている一方、本格的な普及に向けて、いかに基地局やネットワークを整備すべきかといった課題があらためてクローズアップされている。

消費者サイド(B-C)で普及促進(=5G対応端末に乗り換えたいと思わせる)の起爆剤に乏しいことが通信各社の課題である。5Gのメリットを消費者へ周知するタイムラグに加え、乗り換えサイクルの長期化などの理由から、すぐにはスマホ販売に直結しない可能性もある。B-Cに代わるB-B-X(企業連携)対応が不可欠となる。

5Gの環境を全国規模で整えるには、利用を考える企業や事業体、自治体などの参画を積極的に促さねばならない。例えば、全国約21万基の信号機に5G用基地局を設置可能とする法案を政府が検討している。信号機を管理する都道府県公安委員会※1、通信事業者、自治体に加えて、自動運転向けに5G基地局のロケーションを確保したい自動車メーカーも参画している。また東京都は、都の保有する資産を開放するなどして、5Gを都市全体に整備する構想「Tokyo Data Highway」を掲げ、全国レベルの推進に波及させる計画だ※2。その一環として、東京電力パワーグリッド(東電PG)も通信各社と連携して電柱に基地局を設けることを検討している。

このようにB-B-X用途において、「官民連携、民民連携によるインフラ共用」「多分野・産業の企業とのサービス連携」が進む(図)。楽天モバイルは5G通信網の構築に向けて約2,000億円の設備投資をリース、流動化ファイナンスなどで調達する予定であり※3、資金調達や資産の持ち方などの工夫も同様に必要となろう。また、IoTに不慣れな日用品メーカーなどが新たに5G向けサービスに乗り出す場合は、オープンイノベーション(共創)を通じて外部の知見を活用しつつアジャイル型で開発※4すれば早期実現も可能となる。5Gを用いた多種多様な新サービスが登場し、社会変革をもたらす未来を期待したい。

※1:管理業務は警察庁。

※2:2019年8月29日政策発表。

※3:楽天のプレスリリース「特定基地局開設計画(3.7GHz帯及び28GHz帯割当)の認定について」(2019年4月)

※4:コンパクトなテストと修正を繰り返し実施して、短期開発を実現させるソフトウエア開発手法。

[図]官民連携、民民連携による5G通信環境の概要