マンスリーレビュー

2019年10月号トピックス4経済・社会・技術

INCF社会課題リスト2019年度版を公開

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2019.10.1

オープンイノベーションセンター玉川絵里

経済・社会・技術

POINT

  • INCF社会課題リスト2019年度版が完成、全文ダウンロード可能。
  • SDGsを含む社会インパクトの大きい課題を網羅して分析。
  • 関心高まる社会課題解決型ビジネスを創出するヒントに。
「社会課題をイノベーションとビジネスで解決」を標ぼうするINCF※1(未来共創イノベーションネットワーク、事務局:三菱総合研究所)が毎年編さんしてきた「社会課題リスト」※2。3作目の2019年度版では、6分野※3の課題分析・構造化と解決への着眼点に加え、解決への糸口として先端的な技術の動向・実用化の見通し、規制改革の動きなど数多くの具体例を盛り込んだ。PDF版を全文ダウンロード可能※4で、関心の高まる社会課題解決型ビジネス創出のヒントを提供する。

課題の抽出に際しては、国内にとどまらず国連のSDGs(持続可能な開発目標)などグローバルな視点も意識した。もっとも、SDGsの各項目の中には日本にはややなじみにくいものが含まれる一方、SDGsには含まれていなくても日本にとっては軽視できない課題もある。今回の作業では、そのあたりの重要度・優先順位も意識しつつ、ある意味ではSDGsを超える社会課題リストを目指したつもりである。本リストとSDGsの対応関係の例は下表のとおりである。

今回の特徴として、社会課題解決型事業の具体例も多数掲載している。海外企業としては、産業廃棄物から再利用可能な資材を自動で選別・収集する24時間稼働のロボットシステムを開発したZenRobotics社(フィンランド)※5などを挙げた。国内のINCF会員からは、農業未経験者でも熟練農家と同じような作物を作ることを可能にする栽培システムを考案したプラントライフシステムズ(横浜市)※6や、利用者にとって最適な介護サービスを検索・提案できる仕組みを通じてケアマネジャーの負担を軽減する企業ウェルモ(千代田区)などの例を掲載している。

AI、ロボットなどの先端中核技術は、周辺の技術やきめ細かな工夫、ユニークなアイデアとの組み合わせで初めてイノベーションに結びつく。それを事業化するには有効なビジネスモデルも必要だ。本リストがそうした一連のプロセスの起点として、企業経営においても、自社技術を社会課題解決やSDGsへの取り組みにどう活かすかを検討する際のヒントないし手引書として手軽に活用されることを願う。

※1:https://incf.mri.co.jp/

※2:正式名称は「イノベーションによる解決が期待される社会課題一覧」。

※3:①ウェルネス、②水・食料、③エネルギー・環境、④モビリティ、⑤防災・インフラ、⑥教育・人財育成、の6分野。

※4:社会課題リスト入手はこちらから。
社会課題リストダウンロードお申込みフォーム
https://incf.smktg.jp/public/application/add/111

※5:産業用ロボットとAIによるディープラーニングの技術を組み合わせることで、ベルトコンベヤーを流れる産業廃棄物を、アームを使って迅速に分別可能にした。

※6:センサーが収集した栽培環境情報をAIが分析してその都度、最適と考えられる指示を農家に対して行うシステムを開発中。

[表] 社会課題リストにおけるSDGsと問題・課題との対応関係の例