マンスリーレビュー

2019年10月号トピックス1経営コンサルティング次世代インフラ

「目的型MaaS」によるマネタイズ

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2019.10.1

コンサルティング部門 経営イノベーション本部高田真吾

経営コンサルティング

POINT

  • MaaSは実証段階を経て、ついに社会実装フェーズに突入。
  • 従来型MaaSにとどまらず、利用者の目的に沿った事業プランを。
  • 多様な業種を巻き込んだ目的型MaaSは無限の可能性を秘める。
鉄道、バス、タクシー、航空機といった複数の移動サービスを最適に組み合わせる「MaaS(Mobility as a Service)」の社会実装に向けて、鉄道事業者や自動車会社、国や自治体などがさまざまな実証実験を繰り広げている※1。実証レベルでのサービスの具体化は進む一方で、持続的に市場拡大を図る観点から、収益モデル(マネタイズ)の確立がMaaS事業者にとって切迫した課題となっている。

既存のモビリティサービスを統合し、月額制で使い放題としたMaaS(定額制MaaS)を提供したとしても、移動に関する行動変容を促すことは容易ではない。当社がMaaSTech Japan(千代田区)※2と実施したアンケート調査※3※4によれば、定額制MaaSの利用意向は8.7%にとどまる(図)。当事者にとっても、単純に複数の移動手段を統合するだけではコストがかさむばかりで収益性は限定的とも考えられる。

当社では、利用者の目的や嗜好に合った「目的型MaaS」の導入が収益性を向上させると見ている。例えば、「健康になりたい」「免許を返納したい」という明確な意向や目的をもった利用者を対象とした高付加価値型サービスにビジネスチャンスがありそうだ。前出のアンケート調査では、「徒歩などの健康に関わる移動時間が多かった場合に、買い物に使えるポイントを付与する」ことを想定した「健康MaaS」の利用意向が30.3%と定額制MaaSを約21ポイントも上回った。高齢者が運転免許を返納した際、公共交通機関を無料で利用できる特典(インセンティブ)のつく「免許返納MaaS」では、60代の回答者の37.0%が利用意向を示している。

目的型MaaSでは利用者の属性(性別・年齢など)や嗜好に合わせたビジネスプランを検討しやすい。健康MaaSであれば、ヘルスケア事業者などをビジネスに巻き込むことも可能であり、別の目的を設定すれば小売り、観光、娯楽、飲食など多様な業種が連携先の候補となる。目的型MaaSの進展で形成される市場は無限の可能性を秘めている。これからのMaaSの概念は、「複数モビリティの統合」から「他産業とのモビリティの共創」へと大きく変わるだろう。

※1:MRIマンスリーレビュー2019年2月号「日本版MaaSが実サービス化の段階へ

※2:2018年11月設立。MaaSプロジェクト事業、R&D、コンサルティング、メディア事業を手がける。

※3:関東圏の一都三県(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)の居住者を対象に実施。東京都に関しては23区内(都市型)、23区外(都市近郊型)別に分析を加えた。

※4:当社はMaaSを重点研究テーマに位置づけており、複数部署を横断する「MaaS事業戦略チーム」を組織した。同チームにおいて下記コラムなどを発表している。
MaaSの未来 三菱総研が描く2030年代のモビリティビジョン

[図]定額制MaaSと目的型MaaSの利用意向

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