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MaaSの未来 三菱総研が描く2030年代のモビリティビジョン

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2019.3.5

MaaS事業戦略チーム

経営戦略とイノベーション

「移動」という巨大な市場が世界規模で創出される

MaaS(Mobility as a Service)とは「サービスとして提供される移動」を指す言葉だ。車を所有せず、使いたいときだけ使うカーシェアリングなどすでに身近なところで新たなサービスが登場している。バス、タクシー、鉄道、航空機など複数の移動サービスを統合的に検索・予約・決済できるサービスが将来的には提供される。自動運転や、通信網との接続、電動化といった「100年に一度」とも言われる技術革新もMaaSの普及を後押しする。MaaSは今後、鉄道や航空機にも広がり、物流などの周辺産業をも巻き込みながら進展する。自動車だけを取ってみても、現在、世界で650兆円ある関連消費が、2050年には1500兆円にまで拡大し、そのうち、MaaSの市場規模は900兆円に達すると当社は予測している。自動車関連市場の6割を占める巨大市場が、2050年に新たに創出される可能性がある。

キーワードは「つながる」「パーソナライズ」「付加価値向上」

Mobility Service Vision 2030 [動画 約2分]
今回三菱総合研究所は、2030年代における理想のモビリティ社会を描いた。舞台は日本。

都心で働く男性の1日が始まる。今日は地方に出張の予定がある。13時からの会議に合わせて移動手段の予約を入れるようAIスピーカーに話し掛けると、自動運転車、空飛ぶ車(エアタクシー)、鉄道と三つの移動手段が候補にあがる。また「仕事をしたい」「リラックスしたい」と二つのモードから、移動中の希望として「仕事をしたい」を選ぶと、AIスピーカーから提案されたのは仕事に集中できる自動運転車。車内ではテレビ会議を行うことができる。道中、急な事故による交通渋滞があり、その情報を受けとる。すぐさまルート変更が提案され、空飛ぶ車(エアタクシー)に乗り換えることで、時刻通り目的地に到着できる。こういったモビリティサービスやそれに付随するサービスが統合的に提供される。

一方、郊外で暮らす高齢の女性。男性の母親である。AIスピーカーを通じて14時の通院を予約すると、同時に病院までのタクシーが手配される。車内では血圧や体温などが測定され、病院にデータが自動で送信される。医師の診察もスムーズに行われる。診察を終えた女性は、スマートウォッチに向かって高速鉄道を予約。都心にある息子の家を訪ねる。孫の誕生日を祝うためだ。車中では健康のことを考え、ほかの乗客と共にエクササイズのプログラムを楽しめる——。

この動画には、未来のモビリティ社会における三つのキーワードが含まれている。一つめは「つながる」。Door-to-Doorで、車、鉄道、航空機など全ての交通機関をシームレスに繋げるサービスが登場し、モビリティサービスの中核を担う存在となる。消費者が事前に個別の交通機関の最適な組み合わせを指定するスタイルに代わり、複数のモビリティを統合的に検索・予約・決済までシームレスに行うことができるようになるだろう。二つめは「パーソナライズ」。個人の目的や嗜好に応じた移動手段や付随するサービスが提案される。女性の例では「通院」という目的に合わせて、体温や血圧などを車内で測定できる車が手配される。三つめは「付加価値向上」。モビリティサービスは、移動手段に終わらず、個人の目的に応じた場やエンターテインメントを提供する空間へと変化する。動画内の男性は仕事に、女性はエクササイズのために活用し、移動時間を充実させることができる。

すでに始まっているMaaS革命 理想のモビリティ社会実現にむけて

2030年代まで待たずとも、実現するものは少なからずある。フィンランドの首都・ヘルシンキはMaaSの最前線だ。2017年11月、世界初のMaaSプラットフォームとして「Whim」が誕生し、本格稼働を始めている。バスもタクシーも電車も、一つのアプリ内で検索・予約・決済ができる。複数の移動手段を乗り継いでも決済は一括。さらには定額乗り放題のサブスクリプションモデルを採用している。日本ではJR東日本が日立と連携し、バイクシェア・タクシー・バスなどの交通手段を一つにつなぐアプリ「Ringo Pass」を開発、実証実験を開始した。将来的には、対応する交通機関の拡大や、JR東日本アプリ・モバイルSuica・電子マネーとの連携を想定している。トヨタ自動車は、2018年1月に「クルマ会社を超え、人々のさまざまな移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーを目指す」と宣言。同年10月には、ソフトバンクグループと、MaaS新会社の設立を発表した。

やがてMaaS革命はモビリティ産業外にも及び、MaaSの概念自体も「サービスとして提供される移動」から「他産業とモビリティの共創」へと広がっていく。例えば、高速鉄道内で行われていたエクササイズは誰の提供によるものか。それは車両を広告塔に使いたいスポーツジムかもしれない。健康を促進したい保険会社かもしれない。自動車だけでなく鉄道や航空などモビリティが連携する動き、さらに旧来の「モビリティ」の枠を超え、あらゆる業界と連携していく動きはMaaS時代の必然だと言える。

三菱総合研究所は、その連携の一助を担うことで理想のモビリティ社会の実現を目指す。
図 周辺産業界へ波及するMaaS
図 周辺産業界へ波及するMaaS
出所:三菱総合研究所

MaaS事業戦略チーム
高田真吾宮下ゆかり辻早希子、吉田まほろ、森下貴博、平井 翔、松元英信、岩崎亜希森島広章、倉本隆史、神田朱莉、中島 聡