VR/AR技術の将来展望

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2016.5.20

経営コンサルティング本部 事業戦略グループ中村裕彦

1.X-R技術の分類

仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、混合現実(MR)、代替現実(SR)など、さまざまなX-R(リアリティ)技術が実用化されつつある。

それぞれの技術は厳密に分類されてはおらず、人によって使い回しが微妙に異なることが多いが、ここでは、表1のような分類を採用する。

この分類によれば、ARとそれ以外のVR、MR、SRは方向性が異なる技術であるといえる。ARは、サイバー空間で作られた情報を現実空間に上書きするための技術であり、リアリティを追求する技術ではない(リアリティは、現実空間そのものから得られる)。コアデバイスもシースルー・ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)をはじめとして多彩なデバイスが用いられる。

一方、他のX-R技術(VR、MR、SR)は、脳や感覚器を意図的に誤認識させることで、リアリティを作り出すことがカギとなる技術であり、デバイスとして、没入型HMDが不可欠となる。
表1 X-R技術の分類
X-R技術 概要 認識の観点/コアデバイス
VR(Virtual reality:仮想現実)技術 仮想空間上にリアリティ(実在感)を構築する技術。 脳や感覚器を意図的に誤認識させる技術/没入型HMDなど
AR(Augmented reality:拡張現実)技術 現実空間の物体などに情報を重ねることで、新たな認識を与える技術。 現実空間への情報重ね書き/シースルーHMD、タブレットPC,スマートフォン、ヘッドアップディスプレイ(HUD)など
MR(Mixed Reality:混合現実)技術 現実空間と仮想空間を混合した上で、リアリティ(実在感)を構築する技術。 脳や感覚器を意図的に誤認識させる技術/没入型HMDなど
SR(Substitutional Reality:代替現実)技術 過去を記録した情報と現在から得られる情報をシームレスに置換する技術。理化学研究所で心理・認知実験向けに開発。 脳や感覚器を意図的に誤認識させる技術/没入型HMDなど

出所:末尾の参考文献1)2)を参考に三菱総合研究所作成

2.VR/ARの市場規模

米国Goldman Sachs社3)や英国Digi-Capital社4)などではAR/VRの市場予測を発表している。それぞれ前提が異なるため市場規模を単純に比較することはできないが、AR/VRに関連するハードウェア市場はおおよそ図 1のような規模になりそうである。

なお、関連ソフトウェア、サービスについてはかなりの幅があるが、2025年で最大750億ドル程度であると考えられている。
図1 VR/AR関連ハードウェアの市場規模予測
図1 VR/AR関連ハードウェアの市場規模予測
出所:Goldman Sachs社およびDigi-Capital社資料などに基づき三菱総合研究所作成

3.VR技術の現状と将来展望

2016年は、本格的没入型HMDがコンシューマ製品として複数社から商品化されることもあり、VRの本格的な普及開始の年になると期待されている。

いわゆるHMDは、1990年代から製品が存在していたが、2016年がVR元年と期待される理由として、以下を挙げることができる。
  1. 過去のHMDの多くは、視野角が安定注視野限界(無理な探索動作なしで情報受容が可能な角度範囲)よりも大幅に狭く、リアルなスピード感を感じることができなかったが、最近、視野角が大きく広がり、100度~110度に至るようになった(図 2参照)。これによりスピード感をリアルに感じることができるようになった。
  2. 画面の分解能がHDレベルとなり、リフレッシュレートも90Hzを超える製品が当たり前となった。これにより、ノイズのない滑らかな3D画像を楽しむことができるようになった。
  3. 加速度計や角速度計が小型化・コンパクト化し、これがHMDに実装されることで、深部感覚と3D動画を同期させることが可能となった。これにより、ユーザの姿勢変化と画面変化の同期がとれるようになり、リアリティが大きく向上した。また、いわゆる3D酔いの低減にもつながった。
  4. 上記、ハイスペックなHMDが数百ドル程度で購入可能になった。また、若干スペックが劣るとはいえ、スマートフォンに接続することでVR体験ができる低価格デバイスも商品化され、VRを体験できる環境が大きく広がった。
よって、2016年は、本当にVR元年と呼ばれる年になる可能性が高いといと考えられる。
図2 某社のHMDの視野角(水平視野角)の推移
図2 某社のHMDの視野角(水平視野角)の推移
出所:三菱総合研究所
現在、VR(MR、SRも含む)技術は、画像+音声+深部感覚によりリアリティを生み出しているが、近い将来、痛覚や振動角、温感、冷感などの接触により認識される物理的な力を模擬するデバイスを複合することで、よりリアルさを追求する方向に技術開発が進むと予想される。

実際、触覚デバイスのVR応用は各所で進んでいる。例えば、Kickstarterでは不成立に終わったものの、バーチャルな皮膚感覚を抱かせるスーツデバイス(Teslasuit)の開発計画が実際に存在する5)

味覚や嗅覚のような化学刺激の模擬デバイスの研究も進んでいる。実際、一部の味覚を電気的に再現するデバイスなどの研究6)や、スマートフォンに接続して香りを楽しむデバイスの商品化例がある7)

将来、画像、音響、触覚刺激に加え、味や香りを含めた多様な感覚をVRで疑似体験できる時代が到来し、VRの応用範囲もゲーム中心から、多様な専門技術習得用シミュレータ、学習の効率化、記憶の呼び覚まし・改善などに広がっていくと期待される。

4.AR技術の現状と将来展望

近年、AR技術は、業務用や自動車用(高級車のHUD型カーナビや、パーキングアシストなど)として発展を続けているほか、スマートフォンやタブレット型PCのカメラ+ディスプレイを活用した多様なARアプリ(観光、ショッピング、山の名称、天候などの情報表示やゲームなど)が製品化されている。

眼鏡型ディスプレイを用いるタイプのAR製品も、業務用としては、普及しつつある。コンシューマ用としては、Google社のメガネ型デバイス(Google Glass)は一時撤退したものの、現在でも、Meta社(Meta2)やMicrosoft社(HoloLens)などのグローバル企業により、本格的メガネ型ARデバイスの製品化が進められている。

AR技術は、眼鏡型ディスプレイに限定されない多様なデバイス(タブレットPCやスマートフォン、カーナビなど)といった、モノや場所から情報を取り出し、そのモノや場所に重ね合わせて表示する技術と、モノに情報を付与するITインフラの組み合わせとして、VR技術よりも広範な領域で大きく発展していくと期待される。近い将来、観光地でその地域の四季の画像を実画像に重ね合わせて楽しむことや、歴史的遺構に、建造物の再現画像を重ね合わせて過去の在りし日の姿をイメージすることが当たり前になると想定され、われわれの、モノや場所に対する認識力は大きく拡大するようになると期待される。これらの状況から、近い将来、AR関連で、他のX-R技術を大きく凌駕する巨大市場が創出されると期待されている。

5. 参考文献

1)“「仮想現実(AR・VR・SR・MR)・3D投影」市場とは?”astavision
http://astavision.com/contents/news/728

2)“AR・VR・MR・SRの違いについて”
https://wikitude.grapecity.com/topics/ar-featureofarvr

3)Goldman Sachsレポート
http://www.goldmansachs.com/our-thinking/pages/technology-driving-innovation-folder/virtual-and-augmented-reality/report.pdf

4) “Augmented/Virtual Reality revenue forecast revised to hit $120 billion by 2020”Digi-Capital
http://www.digi-capital.com/news/2016/01/augmentedvirtual-reality-revenue-forecast-revised-to-hit-120-billion-by-2020/#.VyHXiPmLRD8

5)“Teslasuit. Feel what you play.”、 Kickstarter
https://www.kickstarter.com/projects/247607504/teslasuit-feel-what-you-play?ref=nav_search

6)“電気味覚を活用した新たな食物コンテンツの提案—21 世紀の新調味料、電気—” 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
http://www.ipa.go.jp/files/000007248.pdf

7)“Hana Yakiniku, world’s first iPhone app to enjoy yakiniku”、KAYAC
http://www.kayac.com/en/news/2013/10/hanayakiniku_release

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