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人口減少、高齢化社会の郊外再生:第1回 総論:郊外再生に必要な条件とは?

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2016.7.26

社会公共マネジメント研究本部田村隆彦

地方創生

POINT

  • 大都市郊外部は今後5年間で急速に高齢化が進展
  • 行政に頼った高齢化対応は限界を迎えつつある
  • 民間の力を発揮させる環境整備が郊外再生のカギ 

大都市郊外部は今後5年間で急速に高齢化が進展

全国的な人口減少、高齢化が進むなか、大都市圏、特に東京圏にあっては2020年まで人口増加が見込まれることもあり、行政として郊外再生への対応の優先度は低かった。しかし、今後5年間で主に1970年前後の高度経済成長期に郊外に住まいを求めた団塊世代が後期高齢者に達するなど、大都市圏郊外部において高齢化対応は待ったなしの課題である。

大都市圏郊外部を三大都市圏の都心部を除く通勤圏(※)と定義すれば、2010年に21%であった高齢化率は、2020年には28%に達し、2014年の全国値26%を上回るレベルに達する。特に郊外部の住宅団地では、柏市の豊四季台団地のように既に高齢化率が40%を超えるところも出始めている。

行政による対応は限界を迎えつつある郊外

郊外部においては、高齢化に伴い都心への通勤者が一斉にリタイアして地域に戻るというライフスタイルの変化が生じ、医療介護、生活支援サービスの充実に加え、医療介護費用抑制につながる介護予防、生きがい創出などの対応が必要となる。加えて、相続などによる空き地・空き家の急増、学校などの余剰施設の増加に対応した既存ストックの管理・活用、商業施設撤退に対応した生活利便性の確保なども必要となる。

一方、郊外自治体の歳入は住民税・固定資産税への依存度が高く、高齢化による税収の減少と医療介護費や公共施設維持管理費の増大により、行政サービスの維持拡大は困難さを増していく。

各地で模索される高齢化への対応

国も地域包括ケアシステムの構築、空き家対策の法制化など(図参照)、こうした課題に対応した各種の施策を打ち出している。これら施策を活用しつつ、課題山積の郊外再生に向け、各地で試行的な取り組みが始まっている。例えば、先述の柏市豊四季台団地では、市・UR・東京大学の連携の下、地域包括ケアシステムの構築、民間事業者と連携した高齢者の生きがい就労等に取り組んでいる。横浜市では4つのモデル地域を選定し、鉄道事業者などと連携して、生活圏の拠点となる駅周辺などに必要な機能を集積させて市民生活を支えるコンパクトな住宅地の形成に着手している。また、春日井市高蔵寺ニュータウンでは、市・UR・商工会、建設不動産業と連携して空き家活用に取り組んでおり、多摩ニュータウンでは、鉄道事業者が生活サポート拠点や移動販売を運営する例も出てきている。

民間の力を発揮させる環境整備が郊外再生のカギ

これまで大都市郊外部は閑静な住宅地であることに価値があったが、これからは、高齢者の社会参加に加え、若者向けの雇用やサービスの創出など、より能動的な活動がある地域が評価されることになる。それゆえ、増加する空きストックの活用による場の提供、地域住民との連携体制をはじめ、民間の力を発揮させる環境をいかに整備できるかが郊外部の将来を左右する。

本連載では、民間の事業性と密接に関連する空間的な広がりに着目し、次回以降、『点:空き家対策』『面:団地再生』『広域:鉄道沿線まちづくり』の3つの視点から、郊外再生の実現に向けた提案をしていく。

(※)高齢化率の算定にあたっては、都市雇用圏2010年(中心都市への通勤率が10%以上の市町村など;詳細は金本・徳岡「日本の都市圏設定基準」による)に基づき、三大都市圏の中心市を除く自治体の区域(東京都市圏の都区部以外、大阪・京都・神戸都市圏の大阪市、京都市、神戸市以外、名古屋・小牧都市圏の名古屋市以外)と設定した。

参考:郊外再生に関連した近年の施策例
参考:郊外再生に関連した近年の施策例
出所:三菱総合研究所

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