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人口減少、高齢化社会の郊外再生:第3回:団地再生におけるマネジメント機能の必要性

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2016.11.21

地域創生事業本部早川玲理

地域コミュニティ・モビリティ

POINT

  • 課題の多い郊外団地。中でも、民間分譲戸建団地が取り残される。
  • 魅力ある住宅地を再生するには、団地単位で新たな機能・サービスの導入が必要。
  • 住民にとって身近な開発主体や地域に根ざした企業(インフラ関連、地銀)などが団地単位のマネジメント組織の組成を支援。 

これから課題となるのは民間分譲戸建団地の運営

大都市圏郊外部の団地は、1970年頃より開発されはじめ、その後団塊世代を中心とした当時のファミリー層の受け皿となってきた。昨今、住民が一斉に高齢化し、空き家の増加や自動車運転免許を返納した高齢者の買い物難民化が懸念されるなど、大都市圏郊外部が抱える課題が最も早く顕在化している。

しかし、郊外団地といっても、その形態や対策の取組状況はさまざまである。国交省が発表する「全国ニュータウンリスト」によれば、大都市圏※1には1,065のニュータウン(約212万戸)があり、公的主体(自治体・公社・URなど)主導が約45%、残りが民間や個人・組合などによるものである(うち、純粋な民間主導は約2割 ※2)。近年、公的主体が主導したニュータウンは、福祉拠点化や建て替えなど、自治体・公社・URなどにより再生・転換に向けた手が打たれつつある。一方、民間主導で開発されたニュータウンや、公的主体が主導した大規模ニュータウンであっても民間の分譲戸建団地においては、再生・活性化を先導する主体がなく、点在する空き家の対策や生活に必要な機能・サービスの導入が進まないといった懸念が強い。

また、これらの団地の中でも、比較的、都心までのアクセスがよく、住環境も計画的かつ十分に整備されているなど人口減少下でもまだまだ生かしうる団地が多く存在する(当社の推計では、三大都市圏内の好立地なニュータウンにある更新時期を迎える住宅は174万戸 ※3)。特に分譲戸建団地は、居住者層の団地再生に対する問題意識が高く、また、比較的所得水準が高いことから、高齢化・コミュニティ形成などの課題に対する機能・サービスなど、新たな価値を提供することが求められている。こうした背景もあり、開発主体には「新規住宅供給」という役割から、これまでの供給実績を生かした「団地運営」の視点を持つことが期待されている。

郊外団地の再生で求められる新しい機能・サービス

東急不動産が開発した分譲戸建団地「時空の庭グランシア(埼玉県三芳町)」では、戸建住宅地にしては珍しく開発時に管理組合を組成し、管理組合からの委託で同社のグループ会社が、集会棟や植栽の管理、コンシェルジュ業務を実施している。三菱地所では、「泉パークタウン(仙台市)」において、同エリア内の商業施設・ゴルフ場などとも連携し、会員制乗り合いバスの運営や共有緑地の維持管理等を行っている。このように、団地単位で、団地居住者を主たる対象とした会員制のエリアサービスを提供し、住宅地としての魅力につながる取り組みが存在する。

昨今のシェアリング文化の広がりなどを背景に、今後、他の既存団地においてもシェアカー、シェア緑地・農園、シェアスペースなど、モノ・サービスのシェアリングに対するニーズが高まることが期待される。団地としての魅力を維持・向上させていくには、このような時代変化に応じて必要となる機能・サービスの導入とそれらをマネジメントできる仕組みが必要となる。

まずは団地をマネジメントする組織の組成支援から始める

上述のように、団地単位で団地としての魅力を向上させる機能・サービスの導入には、意思決定や運営主体となるマネジメント組織が必要となるが、分譲戸建団地においては、マンションでいう管理組合のようなマネジメント組織がないのが一般的である。

コミュニティ組織として自治会があるが、団地の衰退に対する危機感・問題意識は強いものの、自治会の役割と組織体制の実態から上記マネジメント組織の役割を担うことは困難である。

そのため、新たな機能・サービスの導入などを見据えつつ、まずは、マネジメント組織の組成をサポートしていく発想が必要である。例えば、住民にとって身近な開発主体や地域に根ざした企業(インフラ関連、地銀)などにとっては、団地運営を通じて、リフォーム・リニューアルや既存住宅流通、モビリティの提供、シェアサービスなど、新たな関連事業につなげられる可能性がある。住民とのコンタクトポイントを増やしていくことをインセンティブに、分譲戸建団地の管理組合の組成を働きかけ、運営をサポートするなど、支援していくことができるのではないか。
図 マネジメント組織の組成・運営サポートを基盤とした団地再生ビジネス

図 マネジメント組織の組成・運営サポートを基盤とした団地再生ビジネス

※1:大都市圏は、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋圏(岐阜県、三重県、愛知県)、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)である。

※2:対象の団地は、「全国のニュータウンリスト」(平成25年度国土交通省作成)に基づく。具体的には、次の条件①~③を満たす住宅・宅地開発事業で開発された地区である。
条件① 昭和30年度以降に着手された事業
条件② 計画戸数1,000戸以上または計画人口3,000人以上の増加を計画した事業のうち、地区面積16ha以上であるもの
*住宅・宅地供給だけではなく、公共公益施設の整備も伴うことが多くなる1,000戸(3,000人)以上の住宅・宅地開発事業を対象。また、面的な開発(16ha以上)を対象とし、単体のマンション建設は含まない。
*住宅・宅地開発事業が複数集まって一つのニュータウンを構成する場合や、一つの住宅・宅地開発事業を工区に分けて施行する場合は、それを「連たんニュータウン」として、1,000戸などの数値要件は連たんニュータウンの全体に当てはめて判断している。
*中止または休止された住宅・宅地開発事業については、既に1,000戸の住宅宅地供給または3,000人の居住人口があるものをリストに掲載している。
条件③ 郊外での開発事業(事業開始時に人口集中地区(DID)外であった事業)
*原則として、土地区画整理事業については区画整理年報に記載されたDID内外の区分により判断し、新住事業などの全面買収型の事業はDID外で行われたものと判断している。

※3:都心までのアクセスが1時間以内で、30年以上経過したニュータウン内の住宅の戸数。詳細は、MRIマンスリーレビュー2016年1月号 数字は語る「174万戸─三大都市圏内の好立地なニュータウンでの空き家予備軍の数」参照。

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