運転期間を延長する上では、安全が最優先であることは言うまでもない。性能の低下した古い設備は、交換可能であれば、新品に取り替えることで性能回復が期待される。しかし、交換ができない設備の劣化が原因で安全に影響が及ぶと判断される場合、安全を維持するための新たな代替手段を検討し、プラントに組み込まなければならない。代替手段による安全対策が規制基準に満たないプラントは、当然、運転延長が認められないことになる。
数年後、わが国では運転年数40年を迎えるプラントが続出する。運転開始から40年目までに再稼働の認可が得られていないプラントは、運転期間延長の申請ができないため、必然的に廃炉となる。したがって、40年を超える運転を念頭におくプラントに対しては、再稼働の認可取得の段階から、十分な経年劣化対策を伴うことが前提となる。昨年来、複数のプラントを廃炉とする声明が事業者からなされている。電力事業の経営の立場からは、再稼働に必要な安全対策コストを再稼働後の発電により回収できることが、再稼働の必要条件である。
今後の個々のプラントの再稼働や廃炉の判断の背景に、こういった安全性と経済性の両立があることも理解しておく必要がある。
※:Nuclear Energy Institute (2015). Second License Renewal Roadmap