福島第一原子力発電所の廃炉では未知の部分が多く、長期の対応が見込まれることから、将来の「応用研究」や「実用」の前段階として、研究者の自由な発想に基づく基礎的・基盤的な研究開発が多様に行われることが必要です。「基礎・基盤研究」として、文部科学省が「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」を実施しており、多数の重要な研究が行われています。この事業では、日英・日米・日仏で、内外の大学・研究機関が協力し合い、廃炉に向けた研究を日々進めています。
また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)の廃炉国際共同研究センター(CLADS)でも、国際協力体制を強化する取り組みを始めています。特に最近では、国内外の大学・研究機関が共同研究できる場として、2017年4月に「国際共同研究棟」を福島県富岡町に整備しました。廃炉を着実に進めるための研究開発に関して、より海外の技術協力を得やすい環境に変化してきています。
図表3 基礎・基盤研究の取り組み(文部科学省)における海外機関の協力
実施年度 |
中核機関 |
海外側代表機関 |
研究課題名 |
平成27年度 |
長岡技術科学大学 |
ランカスター大学(英) |
プラント内の線量率の評価と水中のデブリ探査に係る技術開発 |
平成27年度 |
東京工業大学 |
ブリストル大学(英) |
水の漏洩箇所特定とデブリ性状把握のためのロボット・超音波技術の開発 |
平成27年度 |
九州大学 |
シェフィールド大学(英) |
汚染水処理で発生する廃棄物の処理処分技術の確立と高度化 |
平成27年度 |
JAEA |
シェフィールド大学(英) |
汚染水処理で発生する廃棄物等の安全な長期貯蔵・処理・処分のための技術開発 |
平成28年度 |
JAEA |
テキサスA&M大学(米) |
ヨウ素の化学状態に基づく廃棄物の処理方法の開発 |
平成28年度 |
東京大学 |
ロンドン王立大学(英) |
燃料デブリ取り出し戦略の構築:リスク管理と物理シミュレーションの融合 |
平成28年度 |
北海道大学 |
シェフィールド大学(英) |
汚染水処理で発生する廃棄物の固化体の理解とモデル化、処分システムの提案 |
平成29年度 |
【事業開始前のため未定】 |
フランス国立大学(仏) |
【募集テーマ】過酷環境下での作業のための基礎基盤技術に関する共同研究 |
出所:原子力損害賠償・廃炉等支援機構ウェブサイト(http://www.dd.ndf.go.jp/jp/decommissioning-research/dr-committee/materials/04/doc2-5.pdf、2017/9/20閲覧)をもとに、研究課題を簡略化して記載。
応用研究としては、経済産業省・資源エネルギー庁が「廃炉・汚染水対策事業」において補助金を用いた支援をしており、より実用段階に近い研究開発が進められています。この「廃炉・汚染水対策事業」にも、多数の海外事業者が参加しています。(詳細:図表4)
図表4 廃炉・汚染水対策事業(経済産業省・資源エネルギー庁)における海外機関の参画
実施年度 |
事業者 |
実施内容 |
平成26年度 |
IBC Advanced Technologies, Inc.(米) |
海水中の放射性物質を除去する技術の検証 |
平成26年度 |
AREVA NC(仏) |
海水中および土壌中の放射性物質を捕集する技術の検証 |
平成26年度 |
Cavendish Nuclear Ltd(英) |
燃料デブリを水中ではなく気中で取り出す方法の検討 |
平成26年度 |
Create Technologies Limited(英) |
燃料デブリの位置を特定するための視覚・計測技術の実現可能性検討 |
平成26年度 |
ONET TECHNOLOGIES NUCLEAR DECOMMISSIONING(仏) |
燃料デブリを水中ではなく気中で取り出すための燃料デブリ切削・集塵技術の実現可能性検討 |
平成26、27年度 |
Kurion(米)
現Veolia(仏) |
汚染水中のトリチウムを分離する技術の検証 |
平成26、27年度 |
Federal State Unitary Enterprise “Radioactive Waste Management Enterprise “RosRAO”(露) |
汚染水中のトリチウムを分離する技術の検証 |
平成27、28年度 |
COMEX NUCLEAIRE(仏) |
燃料デブリ・炉内構造物を取り出す際に、それらを切削し集塵する技術の実現可能性検討 |
平成29年度~ |
COMEX NUCLEAIRE(仏) |
燃料デブリの所在の特定・検知のための小型中性子検出器の開発 |
平成29年度~ |
Federal State Unitary Enterprise “Radioactive Waste Management Enterprise “RosRAO”(露) |
燃料デブリの所在の特定・検知のための小型中性子検出器の開発 |
平成29年度~ |
COMEX NUCLEAIRE(仏) |
燃料デブリ・炉内構造物を取り出す際の基盤技術開発 |