第3回 AI活用で魅力的な住民サービスを

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2018.4.20

先端技術研究センター澤部直太

AIで変わる社会
最近、国内の自治体ではAI活用の取り組みが花ざかりである。例えば新潟市では、当社が開発したチャットボット(愛称「ひありん」)を用いて住民の意見集約が行われた。これまでの意見集約では、自治体職員と住民の双方にとって負荷となるアンケート調査やインタビュー調査が使われていた。インターネット上のチャットボットが住民とやり取りするだけで意見が集約できれば、自治体業務の効率化に加え、住民からの広範な意見を迅速に集約できるという、両面の効果が期待できる。

さまざまな自治体業務でAI活用が進む

自治体でのAI活用は、チャットボットばかりではない。例えばつくば市では、自治体業務にRPA(Robotic Process Automation)を適用する実証を開始した。また千葉市では、道路舗装の状況をスマートフォンで撮影し、その画像から機械学習により損傷箇所を自動抽出する実験システムを開発した。さいたま市では、近隣の子育てイベント情報をネット上で自動収集して住民に配信するサービスを行っている。

いずれの取り組みも、自治体職員の業務効率化・自動化や、住民向けサービスの質・量の向上とサービス提供の省力化を狙ったものである。
図1 自治体におけるAI活用イメージ
図1 自治体におけるAI活用イメージ
出所:三菱総合研究所

AI活用に適した自治体業務

AI活用の取り組みは、ビジネスの迅速化と収益性にシビアな民間企業の方が活発だ。しかし、実は自治体業務にもAI活用に適したものがたくさんある。

例えば、住民の病状が重症化する前にその予兆をAIで検知して、早めの保健指導につなげることが可能となる。また、介護が必要な住民へのケアプランの候補を個人別にAIで自動作成して、ケアプラン作成業務を高度化・効率化することも可能となる。

表1 自治体職員の業務へのAI活用例
表1 自治体職員の業務へのAI活用例
出所:三菱総合研究所
表2 住民向けサービスへのAI活用例
表2 住民向けサービスへのAI活用例
出所:三菱総合研究所

将来は革新的なAIプロダクトで新たな住民サービスを

表1および表2 に示したAI活用例の多くは、現在すでに製品化されているAI技術(AIプロダクト)を自治体業務に適用したものだ。一方、AI技術は今後も段階的に進歩すると予想されており、2025~30年頃には、さらなる革新的なAIプロダクトが利用可能となるだろう。

例えば自動車に関しては、自動運転の技術開発が盛んに行われている。また、自家用車を所有せずにサービスとして利用するMaaS(Mobility as a Service)も、大手自動車メーカーを中心に検討が進められている。自動運転+MaaSが実現すると、現在の電車やバスなどの公共交通機関は、より便利で安価な自動運転+MaaSにとって替わられる可能性がある。特に、これまで公共交通機関に頼っていた高齢者や子供の潜在的な移動ニーズが喚起され、新たなビジネスを生み出す原動力となるだろう。また、公共交通機関での移動を前提に配置されていた公共施設も、自動運転+MaaSを前提として、住民にとってより効果的な立地条件(道の駅を拠点とするなど)を考える必要に迫られる。

このように、将来登場するAIプロダクトを視野に入れることで、従来は実現できていなかった魅力的な住民サービスが提供できるようになる。
図2 自動運転+MaaSを前提とした公共施設・公共共通機関のゲームチェンジ
図2 自動運転+MaaSを前提とした公共施設・公共共通機関のゲームチェンジ
出所:三菱総合研究所

AIに加えてデジタル化の推進が急務

AIを自治体業務に適用すると、住民サービスの向上と職員の業務効率化の両面で効果がある。両輪が回り始めることで、職員にゆとりが生まれて、新しい住民サービスの企画・実施というさらなる好循環も生まれるだろう。

一方、自治体業務にAIをうまく適用するには、自治体内の情報や業務のデジタル化が重要である。AIはデジタル化したデータにはすぐに適用できるが、情報が紙のままだったり、人手によるオフライン業務が多く残ったりしていると、その部分のデジタル化に着手しなければならない。

電子政府の先進国として有名なエストニアでは、デジタル化の基盤整備を進めた結果、全国規模で医療情報交換基盤が整備された。その結果、基盤上の医療データに対するAIの適用プロジェクトが立ち上がっている。

チャットボットやRPAなどに加え、今後も自治体業務に適用可能な革新的なAIプロダクトが登場するだろう。自治体は、業務のデジタル化を着実に推進しつつ、その時点で使えるAIプロダクトを見極め、実証などを通じて住民サービスに適用してゆくことが重要である。

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