日本を訪問する外国人旅行者が急増している。2017年には約2,900万人に達しており、日本政府は、2020年に4,000万人まで増やす目標を掲げている。今後も外国人旅行者の増加が見込まれる中、これまでは、「施設などのスタッフとコミュニケーションが取りづらい」「多言語表示が少なく分かりにくい」といった外国語対応の課題が指摘されていた。しかし、近年急速に進歩している機械翻訳技術により、これらの課題は解決できそうだ。
すでに、ビジネスや観光で使える実用レベルの機械翻訳技術を搭載したアプリケーションも増えている。スマートフォンやパソコンで利用可能なクラウド型の翻訳アプリに加えて、メガホン型やスティック型の専用携帯型機器も普及しつつある(表1)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックをマイルストーンとして、観光など限定した分野での機械翻訳は、ほぼ完成の域に達するだろう。
表1 機械翻訳のアプリケーション例(2018年5月現在)
アプリ
ケーション |
開発主体 |
概要 |
Google翻訳 |
Google社 |
入力テキストやGoogle Chromeで閲覧したWebページだけでなく、カメラ、音声、会話、手書き等のリアルタイム翻訳も可能。100以上の言語に対応。 |
Skype翻訳 |
Microsoft社 |
他のSkypeユーザーや電話と別の言語間でリアルタイム翻訳した音声通話・テキストと機械音声での出力が可能。音声通話では8言語、メッセージは50以上の言語に対応。 |
VoiceTra |
情報通信研究機構(NICT) |
旅行会話用として高い翻訳精度をもつ音声対応のスマホ用翻訳アプリ。音声認識で声からの入力をテキストに変換し、翻訳結果の表示と音声再生が可能。30以上の言語に対応。 |
メガホンヤク |
パナソニック社 |
空港や駅、イベントホール、観光地などでの外国人向け案内を想定したメガホン型の多言語音声翻訳機。クラウド経由で、定型文追加やソフトウェアアップデートが可能。日本語での発話内容を、日本語・英語・中国語・韓国語で再生。 |
ili(イリー) |
ログバー社 |
旅行シーンに特化したスティック型の小型ウェアラブル翻訳機。ネット接続無しでも利用可能だが、専用アプリ経由で翻訳精度の向上も可能(旅行シーン用に最適化された翻訳辞書を搭載)。日本語での発話内容を、英語・中国語・韓国語で再生。 |
POCKETALK |
ソースネクスト社 |
手のひらサイズの携帯型通訳デバイス。クラウドで最適な翻訳エンジンを自動選択することで、高い翻訳精度を実現。63言語に対応。専用グローバルSIM(通信カード)を装着すれば、Wi-Fi接続しなくても、世界79の国と地域で利用可能。 |