コラム

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中東湾岸産油国における本邦企業の事業機会について

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2019.2.26

環境・エネルギー事業本部遠藤 峻

環境・エネルギートピックス
中東湾岸産油国は、日本に原油を供給してくれる大切なパートナーだが、それら国々の社会や文化に触れる機会が少ないため、イメージをもちづらい人も多いのではないだろうか。最近では、ジャマル・カショギ氏の殺害事件などもあり、予測不可能でハイリスクという印象をもつ向きもあろう。
他方、湾岸協力会議(GCC)に加盟する6カ国(サウジアラビア、カタール、UAE、オマーン、バーレーン、クウェート)では、化石資源の輸出に頼った現在の経済構造では長期的に存続できないとの危機意識のもと、すべての国で社会改革や持続可能な発展を指向する国家ビジョンや長期計画が近年策定されている※1。本稿では、日本にとって重要な国々でありながら、ある意味「遠い国々」でもある中東諸国を、各国のビジョンと絡め、わが国企業のビジネスチャンスという視点で捉え直してみたい。

例えば、サウジアラビアでは、国家ビジョン(Saudi Vision 2030)のなかで「すべての汚染を削減する」など野心的な目標が設定されており、その実現のために、大気環境政策の充実や、大気環境測定網の整備などがうたわれている。Saudi Vision 2030の進捗確認は頻繁に行われ、各省大臣は目標未達になると更迭されるプレッシャーに晒されるなど、達成に向けた政府の「本気度」がうかがえる。一方、具体的な施策を検討し、実行するための人材不足・知見不足の感も否めない(図)。
そんなこともあってか、最近サウジアラビアの政府関係者と話をすると、「日本の成功をまるごと移植してほしい、1年以内に」といった、わが国の知見・ノウハウに対するニーズの高まりを肌で感じることが多くなった。わが国からはさまざまな支援や提案が行われてきたが、サウジ側の本気度は正直、10年前とは様変わりしている。環境測定や環境情報管理、環境対策などで高い技術をもつわが国企業にとって、この「熱気」はまたとない事業展開の好機と言えよう。

本気度は国によって違うものの、各国の環境・エネルギーのさまざまな分野で同様のアプローチが求められている。三菱総合研究所では、関係省庁や国内企業と連携し、長期的な視点で中東諸国の目標達成と日本企業の海外展開を両立させる取り組みを推進していきたい。
図 中東湾岸産油国における政策構造と課題
図 中東湾岸産油国における政策構造と課題
出所:三菱総合研究所

※1 サウジアラビア:Saudi Vision 2030、カタール:Qatar National Vision 2030、UAE:UAE Vision 2021、オマーン:Oman Vision 2040、バーレーン:The Economic Vision 2030 for Bahrain、クウェート:New Kuwait Vision 2035