具体的には、2007年の中国による対衛星兵器(ASAT)実験に起因する大量の宇宙ゴミ(デブリ)発生、近年のスタートアップ企業などによる商業宇宙活動(特に低軌道の大規模衛星コンステレーション※3)活発化とそれに伴う宇宙空間混雑による衛星同士の衝突リスク増加、宇宙システムへの国家あるいは非国家主体によるサイバー攻撃リスク、開発が進む極超音速兵器(そしてその宇宙からの監視)、そして世界各国と民間も巻き込み進もうとしている月面開発に伴う安全確保などが挙げられ、これらリスクを適切に把握した上で、予防・回避措置を取る必要がある。
このように活動内容・技術・ステークホルダーの変化が続く宇宙空間を、安全かつ持続可能に利用し続けるには、法的拘束力のないガイドラインや行動規範など「ソフトロー」※4のアプローチが有効である※5。近年では、2019年6月に国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)において、宇宙デブリ低減や安全確保を目的とした「宇宙活動に関する長期持続可能性(LTS)ガイドライン」が採択され、加盟国が自主的に実施すべき指針について合意されている。
一方、強制力はないため各国によるガイドラインの実行を促す仕掛けを設けることも重要であり、特に当初想定が十分でなかった新たな宇宙活動や技術発展(例:デブリ除去などの軌道上サービス)に対する具体的規律の在り方については個別に検討を深める必要がある。加えて、宇宙は各国の経済活動や技術開発の舞台でもあり、それら競争的活動を阻害せずに国益を担保しつつ同時に国際的な規律を実現することが求められる。