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日本の洋上風力の発展に向けて:公募評価制度の改善策に対する提案

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2022.5.11

サステナビリティ本部寺澤千尋

環境・エネルギートピックス
2030年までの温室効果ガス排出量46%削減や、2050年までのカーボンニュートラル達成など、脱炭素化に向けた取り組みが加速する中、海に囲まれた日本において、洋上風力は将来の主力電源の一つとして期待されている。

洋上風力が主力電源となるためには、コスト競争力を持つ電源となることが大前提となる。また、COVID-19や国際秩序の不安定化等の新たなリスクの顕在化により、グローバル市場におけるサプライチェーン戦略の再構築とエネルギー安全保障の重要性が高まる中、国内産業育成を同時に実現していくことが求められている。

現在洋上風力は、国の公募により開発事業者の選定が進められている。この公募評価制度では、価格を最も重要な要素とすることを原則としつつ、エネルギー安定供給の観点から国内サプライチェーンの多様化を促す評価体系を取っている。本枠組みはコスト低減と国内産業育成の両立を効果的に実現するものである。

一方で、2021年12月末に公表された「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」における事業者選定結果(以下、3海域入札)を踏まえて、公募評価制度において改善すべき点も明らかとなった。

本コラムでは、国における洋上風力の公募評価制度の見直しに関する検討(以下、総括資料)※1において持つべき視点や論点(表1)を提言する。
表1 公募評価制度の改善策に対する提案(まとめ)
表1 公募評価制度の改善策に対する提案(まとめ)
出所:三菱総合研究所

公募評価制度の改善策に対する提案

①評価基準の明確化

今回の3海域入札は、日本初の大型入札であり、非常に高い注目を集めた。その中で、選定結果に関する情報が限定的であったこともあり、憶測を含むさまざまな情報が飛び交い、業界関係者が混乱した。

この点について、総括資料において提案されている選定結果等に関する情報公開は、選定プロセスや公募占用計画に関する透明性の向上を図る有効な改善策であるが、情報公開範囲には限界がある。今回の入札結果を踏まえて、最も重要な改善点は、評価基準の明確化による透明性の向上であり、これは公募評価方法に対する産業界および社会全体の理解と信頼を高める基盤となる。

現在、事業実現性の評価基準※3については、配点とともにおおまかな「確認の視点」と「確認の方法」が示されており、また、公募占用計画の様式にも求める記載内容や具体例が示されているが、海外事例と比較すると、事業者が書くべき内容を理解するために十分な情報ではなく、改善の余地がある。また、具体的に各情報がどのように評価点に結びついているのかが見えづらいため、求められている事項に関する事業者間の理解や認識のばらつきが大きい可能性がある。この点が、国から発表された評価結果に対し、その適切性を疑問視する記事や報道が多数発生した要因と考える。

例えば英国の海域リース入札においては、各評価項目の目的と求める事項について示したのち、さらに詳細な評価項目別に、記載すべき事項と評価基準・方法を丁寧に説明し、ガイダンスという形で示している。参加事業者は、本ガイダンスを読むことにより、国が何を目的とし、どのような回答を期待しているのかを理解することができる。

また、オランダにおける入札では、事業者の事業実施能力を評価する際に、評価項目を細分化し、詳細評価項目別に具体的・定量的な評価基準を設定している。例えば「ウインドファーム建設の確実性」という評価項目の中の「洋上風力用風車の設置経験」という詳細評価項目については、「風車の設置実績が10基未満の場合は0点、風車の設置実績が10基以上の場合は1点」とするなど、評価基準が明確で分かりやすい。また、リスクへの対応に関する評価項目においては、事業者が考慮すべきリスク分類と検討すべき事項を具体的に記載している。

英国の事例に学び、現在の評価項目の枠組みを維持しつつ、各評価項目の目的や狙いをより丁寧に説明すること、加えて適切なレベルで各評価項目の配点を細分化し、求める記載事項や水準をできる限り具体的に説明することが、有効な改善策の一つとなる。また、オランダの事例に学び、可能な評価項目(事業実施実績や事業計画の実現性など)については、評価基準をできる限り具体化・定量化することも、評価制度の透明性を高める方法として有効である。

②運転開始予定日評価における市場環境要因の考慮

3海域入札では、運転開始予定日として2028年(2海域)・2030年(1海域)が示された。これは、2030年温室効果ガス削減目標・エネルギー基本計画目標の達成の観点で厳しい結果となった。

この点に関して、3海域入札の結果公表後、運転開始予定日を踏まえた事業実現性評価の妥当性に対する多くの意見が寄せられた。これは評価基準の曖昧性による、運転開始予定日の評価の重みに関する事業者の解釈・理解のばらつきが要因の一つであったと考える。運転開始予定日を早めることによるFIT買取期間短縮リスク※4は応札価格にも影響した可能性があり、事業者の戦略と評価の実態との齟齬を防ぐ観点でも、①で述べた評価基準の明確化が重要である。

運転開始までの期間短縮のためには、事業者努力を適切に促す評価制度とすることが重要であるが、同時に、洋上風力産業ビジョン※5に示されている日本版セントラル方式の導入や規制・制度の合理化、系統や港湾等のインフラ整備などの市場環境整備を進めることが必須である。

例えばセントラル方式を導入しているオランダでは、入札で事業者を選定してから3年程度で運転開始を実現している。これは、政府が主導して事前サイト調査や環境アセスメント、許認可手続き等を事前に実施し、入札後にスムーズに建設を開始できる環境を整備しているためである。一方日本においては、現状では各種調査や環境アセスメント、許認可手続きは事業者が実施し、許認可プロセスにも時間がかかる。この状況を踏まえれば、改善策の検討にあたっては、事業者努力(経験と適切なリスク管理に基づく円滑な工事計画策定等)と市場環境要因(日本版セントラル方式や系統・港湾インフラ等の未整備による事業リスク等)の双方を考慮する必要がある。

また、市場環境リスクが高い状況においては、リスク感度高く慎重に検討するほど、運転開始予定日は後ろ倒しになることが想定される。運転開始予定日の早さのみではなく、計画実現性とのバランスを取った評価が必要となる。総括資料では、計画実現性を担保するためにペナルティーを強化する案が示されていると理解されるが、リスクを事業者側に寄せるのみでは、結果として運転開始予定日の後ろ倒しにつながる可能性もある。ペナルティーを強化するのであれば、現在、運転開始予定日延長事由として認められている複数事業者間の港湾利用期間の重複に加えて、事業者が合理的にコントロールできないと判断されるその他の事由(系統増強工事の遅れ、港湾先行利用者の工事遅延、激甚災害等の天変地異、戦争、パンデミック等)も認めるなど、双方向の議論が必要と考える。

本論点に関する議論を適切に深めていくためには、国においては、3海域入札の運転開始予定日の設定根拠や事業者間の差異の要因について、公募占用計画や事業者ヒアリングに基づく分析を行い、議論のベースラインとして提示することが重要と考える。本要因分析結果に基づき、入札時点の市場環境から想定される標準的な運転開始予定日を示し、これを評価基準に取り入れていくことも一案である。

③事業実現性評価点の補正要否の検討

今回、価格については最低価格の事業者に120点満点が必ずつく評価方法である一方、事業実現性評価は満点がつかず、実質的に当初想定されていた1:1の得点比率にはならなかった。この結果に対して、価格競争に重きが置かれ、国内産業育成が進まないことを懸念する声が寄せられている。

洋上風力を主力電源化するためにはコスト低減が必須であり、供給価格を最も重要な要素とする原則は忘れてはならない。一方で、エネルギー安定供給確保の観点からも戦略的に国内産業育成を進めていくことは必須であり、国内産業育成を実現する提案を事業者からうまく引き出す評価上の工夫が必要である。

この点について、総括資料において最低1社はトップランナーとなるよう評価する案が示されているが、入札の評価基準は、国が目指す姿(政策目標)を示すものであり、その評価基準に達しない場合においても、自動的にトップランナーを作り出すことは、国が事業者に求める水準と実態との不整合が生じることを許容するものとなる。本来あるべき評価の観点で、本措置には違和感が生じる。また、あまり評価点に差異がないミドルランナーが複数社存在する際に、何社をトップランナーに引き上げるかの合理的な判断も難しいと想定される。

事業実現性評価で最高点の事業者を自動的に120点に換算する提案については、本案により事業実現性評価の重みが増すことから、国内産業育成を促進する効果が見込まれる。一方、前述のトップランナーと同様に、国が事業者に求める事項・水準と実態との不整合が生じる点について、同様の違和感が生じる。

あるべき姿は、事後的な補正を行うことなく、国においては政策目標に照らした適切な評価基準を設定し、事業者においては120点満点獲得を目指し努力することである。もし市場や産業の現状と評価基準(難易度)のギャップが大きいのであれば、基準自体を適切に修正し、市場・産業の成熟度に合わせて段階的に基準を引き上げていく改善策もある。

自身の評価点が他者の評価により変動する相対評価の性質が強まることにより、評価点の予測がさらに困難になり、応札価格戦略にも影響を与えるデメリットも考慮する必要がある。①に述べた評価基準の明確化等により、評価に係るリスクを低減し、点数予測の予見性を高めながら国内産業活用策等における事業者の創意工夫を最大限引き出す観点も重要である。点数の予見性向上はより低い供給価格実現にも貢献する。得点比率のみに偏らない多面的な観点で、最善策に関する慎重な議論を行う必要がある。

④同一事業者による落札区域数制限要否の検討

総括資料において、同一事業者による落札区域数の制限のあり方を検討する方針が示されている。具体的には、複数区域の事業者選定公募を同時に実施する場合を想定したもので、「多様な産業形成を促進する」ことが本措置の目的とされている。本目的に照らして落札区域数を制限することが最適な解決策であるか、熟考が求められる。

事業者が短期間に引き受け可能な事業数にはおのずと限界があり、むしろ大量導入に向けて産業界のキャパシティー増強が課題となる可能性が高い。また、現行の入札ルールにおいて、すでに事業遅延や中止に対する罰則が設定されており、事業者のキャパシティーを超えた不用意な応札を防止する措置がすでに講じられている。

また、2030年および2040年の導入目標達成に向けては、2030年までは少なくとも1GW/年、2040年にかけては2.0~3.5GW/年の案件形成が継続的に必要であり、多数の区域の開発を実現するためには、多様な企業の参画が必須である。上限の設定により、1区域あたりの参画事業者数が減少すると、コスト競争が阻害される可能性もある。談合を助長する可能性がある点も関連する審議会等で指摘されているとおりである。

仮に上限を設ける場合においても、上限の基準をどうするか(区域数か区域総容量か等)、今後の全入札パターンに対応可能な合理的な適用ルール(区域数や区域総容量をカウントする期間等)を設定可能かなど、検討すべき課題は多い。

上限の基準については、日本における1海域あたりの規模は海外と比較して小さく、コスト低減のためにはスケールメリットの観点から、案件の大規模化が必要である中、例えば350MW×3区域と、1GW×3区域を同列で扱い、区域数のみの観点で1事業者あたりの事業規模を細分化することは、コスト増につながる可能性が高く、整理としても合理性に乏しい。

関連する海外事例として英国(イングランド・北アイルランド・ウェールズ)の直近の海域リース入札(Leasing Round4)では、1事業者あたりの入札容量上限が3GWに設定されているが、1回の入札の総容量は約8GWであり、入札容量上限(3GW)と合わせて日本の入札規模を大きく上回る。加えて、英国はまとまった規模の海域リース入札を一定期間ごとに行っており、比較的小規模な入札を毎年実施する日本とは状況が異なる。

また、適用ルールについては、複数区域の入札が同時に実施される場合のみに適用するのか、入札が数カ月おきなど断続的に実施される場合の扱いはどうするか、断続的に続く場合にも適用するのであればどの期間で区切るかなどを考える必要がある。運用側の行政負担・コスト削減も含め、制度はできる限りシンプルにする観点も重要である。

事業者が短期間に引き受け可能な事業数にはおのずと限界があること、目標達成には今後毎年数GW規模の案件形成が必須であり多様な産業形成が必然であること、合理的基準の設定にも課題が多いこと、談合助長リスク等を踏まえ、本対応の必要性を慎重に検証する必要がある。

⑤審査期間の短縮

3海域入札は、2021年5月末の公募占用計画受付締め切りから、結果公表の2021年12月末まで、7カ月の時間を要した。

海外事例を見ると、例えばオランダのHollandse Kust North入札(1区域)の審査期間は約3カ月である。また、スコットランドのScotWind入札は、17区域を約6カ月で審査している。

日本の審査期間が長くなった要因の一つとして、日本で初めての大型入札かつ複数区域であったことに加えて、1点目の課題として挙げた、評価基準の曖昧性が影響していると考える。明確な基準がないことにより、審査側の裁量による部分が大きくなること、また、事業者から提出される公募占用計画の内容のばらつきが大きくなることにより、結果として、比較評価のための追加的な事業者ヒアリングや関連情報収集の負荷が増え、審査期間の長期化につながっている可能性がある。

行政負荷・コスト削減の観点からも、評価基準の具体化・明確化とセットで、審査の合理化を進め、審査期間の短縮化に向けた取り組みも進めることが重要と考える。これにより、事業形成スピードの向上に加え、他施策の実現スピード向上等の副次的メリットも期待される。

洋上風力の主力電源化に向けて

洋上風力の主力電源化に向けて、コスト低減と国内産業育成を実現する効果的な公募評価制度となるよう、偏りのない多様な観点で必要な議論を尽くす必要がある。同時に、洋上風力産業ビジョンに掲げられている日本版セントラル方式等の各種必要施策を迅速に実現していくことも求められる。

また、今回の公募評価制度改善が、コスト低減と国内産業育成の両立につながっているかを検証することも重要である。そのためには、国内産業育成状況のモニタリング、関連データの収集と公開が有効である。

当社では、関連プロジェクトを通じて、官民協議会および洋上風力産業ビジョンにおける目標達成に向けた各種取り組みの支援を行っている。今後も官公庁および事業者の皆さまと議論を重ねながら、官民双方をつなぐ存在として、洋上風力発電の主力電源化の実現に貢献していきたい。

※1:総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会洋上風力促進ワーキンググループ 交通政策審議会港湾分科会環境部会洋上風力促進小委員会 合同会議(第11回)資料1:「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」における事業者選定の総括等
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/yojo_furyoku/pdf/011_01_00.pdf(閲覧日:2022年5月9日)

※2:開発の初期段階から政府や自治体が関与し、より迅速・効率的に風況等の調査、適時に系統確保等を行う仕組み。洋上風力産業ビジョンには明記されていないが、環境アセスメントや各種許認可手続き迅速化等の施策を含み、入札参加事業者間の公平性担保と事業開発迅速化の双方を実現する仕組みと解される。

※3:現在の公募評価制度では、「価格」と「事業実現性に関する要素」に分けて評価を実施。価格を最も重要な要素としつつ、難易度の高さや経済波及効果の大きさを考慮し、価格と事業実現性の比率は1:1(120点:120点)に設定している。

※4:現在の入札ルールでは、応札時に提出する書類(公募占用計画)に「事業の実施時期(運転開始予定日)」を記載するよう求めている。本運転開始予定日を運転開始期限とし、これを超えた場合は、FIT制度における調達期間を短縮するルールとなっている。

※5:洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会「洋上風力産業ビジョン(第1次)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/yojo_furyoku/pdf/002_02_02_01.pdf(閲覧日:2022年5月9日)

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