【Act】ジョブ・マッチング機能を高めるとともに、転職者が不利になる制度の改善を
近年、さまざまなHRテクノロジーが進展している。例えば、企業側へのサービスとして、自社に適した人材の採用に向けて、社内の高業績者の分析をもとに自社に適性のある人材の要件を抽出し、採用活動の際に就職希望者に示すことで要件に応じた人材を募集するのに役立てるといった取り組みが始まっている(例:Institution for a Global Society社のサービス、アクセンチュアにおける自社活用など)。一方、転職希望者などの個人に対するサービスの整備は相対的に遅れている。
今後は、企業向け、個人向けの双方において、異動や転職にかかるジョブ・マッチング機能のさらなる充実が求められる。
また、社会制度として、退職金算定など転職すると不利になる制度も残されている点も課題である。近年、勤続年数とともに累進的に増えるという退職金算定の仕組みを改定する企業も増えているが、そうした取り組みが普及することとあわせて、退職金への過度の優遇を改め、転職への阻害要因を減らしていくことも期待される。
【Perform】個人の力を引き出すマネジメント、ポテンシャルある人材を惹きつける待遇改善を
人材の学びや行動は、最終的には職場で活躍し、業績を上げることに結びついていなければならない。
個人が能力を発揮するには、業務ごとにそれらを効果的に遂行できる資質のある個人を雇用主が選ぶとともに、個人の能力が最大限に発揮されるようなマネジメント、さまざまな能力を持つ個人に最適な組み合わせることによるチーム編成が求められる。
特に、業務の高度化をけん引することが期待される「ノンルーティン度」の高い人材については、その職に向けて人材が学び、行動するためのインセンティブを十分付与する必要がある。しかし、日本では、職の「ノンルーティン度」と年収との関係が相対的に弱く(
第4回連載の図表4-5参照)、ノンルーティン度の高い人材を惹きつける待遇面での魅力が欠けている。今後、日本の人材市場においても国際的な賃金相場の影響は強くなると予想され、ノンルーティン度の高い職にはより高い待遇を提供することが不可欠になるだろう。