こうした能力強化のためには社会人が学び続ける姿勢が不可欠であり、「リカレント教育※1」がその受け皿となる。第9回では、リカレント教育の先行事例を紹介しつつ、その質と量を充実させるための提言を行う※2。
※1:生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システム。いわゆる「学び直し」。
※2:明治大学小川智由商学部教授、望月利昭氏、琉球大学藤野公子客員教授、日本工業大学小田恭市教授、秋元康男氏、東京工業大学古俣升雄特任助教の各氏にインタビューのご協力を仰ぎ、本稿とりまとめの参考にさせていただいた。
※3:文部科学省「リカレント教育の抜本的拡充に向けて」(2018年3月)では、大学等におけるリカレント教育の現状認識として、①プログラムの総数が少ない、②内容として実践的なものが少ない、③学んだ成果が見えにくく企業等で評価されない、などを挙げている。
※4:マクロミルが国内MBA修了者(20~50歳)を対象に2015年6月に行ったアンケート調査結果に基づき三菱総合研究所が集計。
https://career.nikkei.co.jp/contents/
※5:厚生労働省「平成27年賃金構造基本調査」。
https://www.mhlw.go.jp/file/
※6:OECD, “Education at a Glance 2017”による2014年のデータ。
※7:会人教育への公的支出は約3,300億円である(平成29年度)。(厚生労働省職業訓練局の予算、雇用保険制度による就職支援法事業、文部科学省による生涯教育等事業の合計額)
※8:日本でのリカレント教育の相場は現在、短期10万~20万円程度(計120時間の講義等)、1~2年間の大学院等通学200万~300万円程度。
※9:シンガポール政府は「Skill Future」プログラムとして、スキル開発や生涯学習のため25歳以上の全国民に500シンガポールドル(約4万円)のクレジットを支給(2016年1月)。政府が認定するコースは、受講料の9割以上が政府補助であり、このクレジットを使って充実した教育を受けることができる。年間の受講生は人口の約1割にのぼる。