DXに向けた取り組みとして、大手商社の双日では、「デジタルは顧客・社会ニーズを価値創造につなげる上での大前提であり、全従業員が持つべき共通言語」と位置付け、2021年4月よりITパスポート取得を全社員必修化するなどして、ITリテラシーの底上げを図ってきた。加えて昨今では、DXと実務とのさらなる連動のために、デジタル人材育成プログラム「基礎」「応用」を開始している。
このうち「基礎」のプログラムは、ITリテラシー、情報セキュリティマネジメント、データサイエンス、デジタルマーケティングの4テーマからなり、それぞれオンライン形式での充実した学習コンテンツが準備されている。各テーマとも履修に10時間程度かかるコンテンツとなっており、現中計では総合職約2,000人全員が計50時間近くにも及ぶプログラムを履修することを目標としている。
双日のデジタル人材育成プログラムが目指す姿は明確である。商社が強みとしてきたネットワーク力を活かしながら、旧来型の商社のビジネスモデルにデジタル技術を加えることで、新たな付加価値を創出する。そのための知識を全社員にインストールしていく取り組みを「基礎」と位置付けている。通り一遍の知識を伝授するにとどまらず、外部のパートナーと共通言語を持って会話できるようになるのに必要な知識の習得を意識している。
対象は全社員ながら、各プログラムには職層によって異なる意図が組み込まれている。例えばITリテラシーのプログラムでは、全社におけるデジタルの共通言語化というねらいのほか、例えば管理職層向けには、自身のリテラシー向上に加え、デジタルのスキルや知識を身に付けた部下に適切なアサインメントやミッションを与える役割を求めている。
今回のデジタル人材育成プログラムの開発は、双日としても従来にない規模の投資であるという。その背景には、「人材は会社の資本である」という明確な思いがある。「基礎」は、原則として業務時間内で履修すべきとしており、管理職層にも全社員のプログラム参加に対する理解浸透を図っている。例えば管理職層向けの集合研修では、CDO(最高デジタル責任者)室から、このプログラムを通してどのようなスキルが身に付くか、それが現場業務にどう活用できるかなどについて実例を挙げながら説明し、理解を促している。こうした取り組みが、社員への教育投資を重視する風土醸成につながっていると推察される。