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2018年1月号トピックス3環境・エネルギー

電力市場の活性化に向けた価格指標の活用

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2018.1.1

環境・エネルギー事業本部松本 拓史

環境・エネルギー

POINT

  • 電力の安定供給と経済性の両立には、活性化した競争市場が不可欠。
  • 市場の活性化に向け、適切な市場リスク評価に基づく取引市場の活用が必要。
  • 電力フォワードカーブは、市場リスクの評価指標となる。
自由化を迎えた電力業界で、電力販売における地域独占・規制料金制度からの変革が進められている。エネルギー政策の議論においても「安定供給」に加えて、市場メカニズムに基づく「経済効率性」を同時に追求することが求められている。そのためには、自由競争市場の整備に加え、小売事業者が効率的に供給力を確保できるよう、市場を十分に活性化させることが必要不可欠である。しかし、現物取引を行う日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場※1の取引量は電力需要全体の4%程度にとどまっているなど、流動性の高い市場環境の構築までは依然として、道半ばである。

電力市場の活性化に向けては、取引主体である電気事業者が自社の抱える市場リスクを適切に把握した事業運営を行い、市場活用を拡大する必要がある。例えば、将来の電力価格の見通しによって、事業者はその価格と比較して不経済な既存契約の見直しが可能となる。

取引の場としては、スポット市場や先渡市場※2に加え、間もなく上場が予定されている先物市場※3などの活用が想定される。事業者の市場活用促進は、自らの事業運営の効率化に資するとともに、市場全体の流動性の増大にも寄与する。市場の流動性の増大は、効率的な価格形成を導き、事業者の市場活用がますます加速するという好循環につながる。

市場リスクの評価指標としては、「電力フォワードカーブ」の活用を提言したい。将来受け渡しする電力の現時点での参照価格となる電力フォワードカーブは、自由化が先行する欧州では、電力ビジネスで生じる日常的なリスク管理に広く活用されている。日本でも、市場リスクの把握や電源調達についてのポートフォリオの定期的な見直しを行う上で、重要な情報ツールになりうる。

フォワードカーブの普及は、事業者の市場リスク把握に基づく戦略的な事業運営を後押しする点で、市場活性化の鍵を握る。市場全体の活性化が進めば、効率的な市場形成を通じて、電力の安定供給と経済性の両立へとつながることが期待される。

※1:日本卸電力取引所(JEPX)が開催する、翌日に受け渡しする電気の取引を行う市場。

※2:JEPXが開催する、将来の一定期間に受け渡す電気を取引する市場。

※3:将来に購入する電力の価格を事前に決めて取引する市場。東京商品取引所(TOCOM)が2018年9月に上場予定。

[図]電力フォワードカーブの普及による政策目標達成のメカニズム

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