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2019年11月号トピックス1地域創生

HACCP制度化をビジネスチャンスに

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2019.11.1

西日本営業本部氷川 珠恵

地方創生

POINT

  • 2020年に制度化されるHACCPは新たなコスト要因として敬遠されがち。
  • しかし、安全関連のデータ活用を通じて新ビジネス創出の土台になりうる。
  • HACCP導入を機に、最新技術で付加価値を生むフードテックの加速を。
2020年6月から、原則として全ての食品事業者や飲食店などに、食品の製造・出荷などの全工程にわたって安全管理する国際標準HACCP※1に準じた仕組みの導入が求められる。国内で流通する食品については安全がすでに確保されているとの認識が根強く、HACCPは新たな手間やコストを生み出すだけだと敬遠されがちである。

確かにHACCP導入には文書作成や記録管理の手間がかかる。データを効率的に収集・蓄積するにはセンシングやIoTの技術も有効であるが、初期投資もかさむ。しかし、視点を1歩先に向けてみよう。収集・蓄積したデータを活用できれば、食品業界による大胆なコスト削減や付加価値創出が可能になるだけではなく、社会的にも大きなメリットが見込めるのではないか。

例えば、散発的に発生している食中毒の原因が、ある原材料だと推定できたとする。HACCPで整理された原材料情報が集約されていれば、その原材料を扱っている食品事業者へ一斉にアラートを出すことが可能になる。事故を起こしたのと同じ製造工程を採用している事業者に変更を促すこともできる。この結果、人身被害の拡大やそれによる食材破棄、買い控えのリスクを回避できれば、膨大なコスト削減につながる。

データ活用の効用は安全面だけにとどまらない。HACCPにおける温度管理のモニタリングを強化して流通過程の温度データを蓄積・分析すれば、適温逸脱による生鮮品の傷みを防ぐなどして食品ロスを大幅に減らせるかもしれない。データ分析により、安全や品質に最適なリソース配分を可能にし、コスト削減につなげられる可能性もある。

海外ではこうしたデータ分析の有用性に注目した動きが目立つ。米国ではブロックチェーン技術による製造・流通管理強化に貢献したウォルマートの幹部が食品医薬品局(FDA)に転じてデータを活かした政策に携わるなど官民連携が進んでいる。英国でも当局が食肉業界と組んで検査データ標準化を進め、安全強化のインフラとして整備する方針である。日本の食品業界もHACCP制度化を、新技術により付加価値を生むフードテックを本格的に活用する段階に進むためのチャンスと捉えるべきであろう。

※1:Hazard Analysis and Critical Control Point。食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法。

[図] HACCP方式と従来方式の違い

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