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2019年12月号トピックス2ヘルスケア・ウェルネス

「いきいき」地域の力を介護予防へ活かす

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2019.12.1

イノベーション・サービス開発本部飯村 次郎

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • 地方財政にとって、介護予防の仕組みづくりは喫緊の課題。
  • 運動継続モチベーションの維持と効果の可視化を目指すべき。
  • 身体の客観的な数値測定で、災害時の効率的な避難計画策定も可能に。
2020年代には、団塊世代が後期高齢者となり、地方財政における医療・介護費用の増大は避けられない。そのため各地の自治体では、健康寿命延伸に欠かせない介護予防へのさまざまな取り組みを試行している。2019年6月、政府も「介護インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)※1」の抜本的な強化を図ると発表し、自治体における介護予防事業には、追い風が吹いている。

2002年に高知県高知市から始まった「いきいき100歳体操※2」は、週1〜2回地域の住民が自主的に集まり、決められた筋力運動を行う施策だ。現在、全国400カ所以上の自治体で取り入れられ、身体機能の維持や向上に加えて、住民同士の交流を深める「場」としても期待できる。しかし、高齢者の運動継続率を上げるためのインセンティブ制度を設けている自治体は少ない。また、多くの自治体は、介護予防事業の成果をKPI※3として可視化することにも苦慮している。

新潟県見附市では、いきいき100歳体操は導入していないが、歩いた歩数や健康診断を受けた際などに「健幸ポイント」を付与し、たまったポイントを地域で利用できる商品券と交換できる施策を講じている。利用者ごとに目標を設定し、その達成状況に応じて健幸ポイントというインセンティブを付与することで、運動モチベーションを引き出すことに成功した。収集したデータから、運動と医療費削減の因果関係を把握し、自治体として事業効果向上のPDCAサイクルを回している好例だ。

兵庫県淡路市では、高齢者が手や足へ簡単に装着できるIoTデバイスを使って、いきいき100歳体操の身体的な効果を把握するデータを取得し、PDCAサイクルの客観的なデータとして活用している(写真)。その結果、いきいき100歳体操による医療・介護費の大幅な削減効果が実証できた。さらに同市では、自己申告でなく、測定会における客観的な結果データをもとに「マイ・タイムライン※4」を作成し、災害時に個々人の運動能力を考慮した実効性のある避難態勢の整備を進める予定だ。介護予防事業は、医療・介護費用の削減にとどまらず、他事業へ展開することも可能になってきた。

※1:保険者や都道府県の介護予防等への取り組み状況について評価を加え、保険者や都道府県に交付金を交付する制度。

※2:高知県高知市では「いきいき百歳体操」。

※3:Key Performance Indicator。目標に対する進捗具合を計るため、継続して使う定量的な指標。

※4:個人別避難計画。

[写真]「 いきいき100歳体操」とKPIデータの取得例

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